公正取引委員会の看板。公正取引委員会などが入る中央合同庁舎第6号館B・C棟で=東京都千代田区霞が関で2019年、本橋和夫撮影

 下請けとして雑誌製作に携わるライターやカメラマンの報酬を著しく低い額に設定したとして、公正取引委員会は12日、東証プライム上場の出版大手「KADOKAWA」(東京都千代田区)など2社の下請け法違反(買いたたき)を認定し、再発防止を勧告した。公取委は「通常」の報酬から不当に引き下げられた差額分を計590万円(8月末時点)と試算しており、KADOKAWA側に支払うよう求めた。

 公取委によると、KADOKAWAは2023年1月、自社発行(当時)の生活情報誌「レタスクラブ」について、記事執筆や写真撮影を委託する26の下請け事業者に「原稿料改定のお知らせ」などと通告し、一方的に報酬を引き下げた。引き下げ率は6・3~39・4%で、大部分の事業者が10%以上に達していた。出版不況に伴うレタスクラブの発行部数や広告収入の減少が背景とされる。

 勧告を受けたもう1社は、KADOKAWAの100%子会社「KADOKAWA LifeDesign」(千代田区)。24年4月からレタスクラブの発行を引き継ぎ、買いたたきも踏襲していた。

 下請け側のライターやカメラマンはほとんどが特定の企業・団体に所属していないフリーランス(個人事業主)だった。大手に対して弱い立場にあり、公取委の調べに「仕事がなくなってしまうと考え、報酬を引き下げられても何も言えなかった」などと訴えたという。一方、KADOKAWA側は「引き下げを受け入れてもらったので法令違反とは思わなかった」と説明しており、下請けに仕事を発注する親事業者としての認識の甘さが露呈した。

 公取委による買いたたきの認定は勧告が公表されるようになった04年以降、5件目。「通常より著しく低い対価」とする下請け法の規定は、通常の商習慣としての値引きと線引きがあいまいで、違法性の判断が難しいとされる。【渡辺暢】

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