鹿児島県酒造組合(鹿児島市)が地元のシンボル・桜島のふもとにある観測坑道で、本格芋焼酎を熟成させる取り組みを始めた。低温で湿度もある熟成に適した環境に、火山活動の振動が加わることで、焼酎の味わいがどう変化するのかを調べる試みだ。1年以上経過した状態を確認する計画だが、果たして大自然はどんな効果をもたらすのか。
熟成の地に選ばれたのは桜島の南東側にある有村観測坑道(全長230メートル)。砂防工事の安全対策を目的に設置され、国土交通省が管理している。坑内は年間を通じて温度約19度、湿度93%超に保たれており、まれに火山性地震を観測するほかは静寂に包まれている。
焼酎の熟成には、温度と湿度の安定が必要とされている。うってつけの環境を生かそうと立ち上がったのが鹿児島大や鹿児島県、そして酒造組合だった。
鹿児島大と酒造各社は過去にも協力したことがある。2011年、国際宇宙ステーションで16日間滞在した酵母と麹(こうじ)菌を活用し、焼酎を造る計画でも力を合わせた。協議の結果、今度は大地を舞台にした実証実験に着手することが決まった。
12日に有村観測坑道で「入坑式」があり、組合加盟13社の一升瓶が貯蔵された。組合によると、火山の地下坑道で酒類を寝かせる取り組みは例がないという。3年間にわたり各社が年24本ずつ貯蔵し、来年の秋に県工業技術センターと鹿児島大が味や香りを調べる。今のところ一般販売の計画はなく、イベントで振る舞うことにしている。
桜島の活動で味がどう変わるのかメーカー側も興味津々だ。若潮酒造(同県志布志市)の下戸(さげと)誠司社長は「社内にもトンネル貯蔵庫があり、1年後の変化を比べたい」。本坊酒造(鹿児島市)の本坊真嗣常務は「『桜島年号焼酎』の銘柄名で販売しており、実証実験にぜひ参加したいと思っていた。柔らかさ、まろやかさの変化に期待している」と語った。【梅山崇】
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