「信愛塾45周年・NPO法人化20周年記念の集い」で塾に通う小中高生や出身者らを紹介する竹川真理子センター長(左)=横浜市南区で2024年11月9日午後3時19分、横見知佳撮影

 外国にルーツを持つ子供たちの支援に取り組むNPO法人・在日外国人教育生活相談センター「信愛塾」の設立45周年と法人化20周年を祝う集会が9日、横浜市南区であった。教育関係者や支援者ら約70人が集まり、塾の活動を振り返った。

 集会では塾の職員やOBらがそれぞれの経験や思いを紹介した。竹川真理子センター長は「周囲の人に恵まれて運営してきた」と感謝する一方で、24時間体制で子供らの相談を受けている現状を説明。「問題が山積み。行政や学校からの相談も増えている」と支援継続の必要性を訴えた。

集会で司会をした中学2年の林娜さん(左)と高校1年の井口喜詞さん=横浜市南区で2024年11月9日午後3時45分、横見知佳撮影

 司会は塾に通う2人が担当した。フィリピンにルーツのある高校1年、井口喜詞(よしのり)さん(15)は「塾は家のように落ち着く。その良さが伝えられた」と語った。小学4年の時に中国から引っ越してきた中学2年の林娜さん(14)は「(スタッフや友達と)中国語で話せるのでどんなことでも相談できる場所」と話した。

運営資金にCF募る

 1978年に設立されたNPO法人・在日外国人教育生活相談センター「信愛塾」(横浜市南区)が、運営資金を確保するためのクラウドファンディング(CF)を実施している。子供たちに学校や家でもない「居場所」を長年提供してきた信愛塾。竹川真理子センター長は「CFをきっかけに、存在を知ってもらいたい」と話す。

 信愛塾は在日外国人の生活相談や学習支援のため設立された。現在は小中高生約50人が通い、そのルーツは中国、フィリピン、バングラデシュなど7~8カ国にわたる。友達と宿題をしたり、お菓子を食べたりして竹川さんらスタッフと話しながら過ごす。子供たちは「自分の家よりも家のよう」と口をそろえる。

 子供たちが抱える事情はさまざまだ。母子家庭で生活が困窮していてその日食べるものがない子供や、不登校や自傷行為など精神的に不安定な状態に陥る子供も少なくない。中でも言語の問題は大きい。日本語が分からないまま日本の学校に転入して授業が分からず、学校や家庭でも自分の思いを打ち明けられないケースがある。

 2月に職員となった王遠偉さん(28)は中国から2008年に来日し、信愛塾で日本語を学び、進学のサポートを受けたOB。今ではかつての自分と同じような境遇の子どもたちから慕われる存在になっている。

 竹川さんは「母語で話せると肩の力が抜ける。(王さんは)中国にルーツを持つ子らが中国語で話せる貴重な存在になった」と評する。他にもフィリピン人の保護者にボランティアを担ってもらうこともあるという。

 運営は寄付でまかなわれており、財政的に厳しい状況が続いている。CFで集まった資金はこうした人件費などに充てられる予定だ。王さんは「ここで育って今の自分がある。次の希望となる世代にこの居場所をつなげていきたい」と話す。

 CFは運営サイト「キャンプファイヤー」で12月15日まで実施。目標額は300万円としている。【横見知佳】

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