バイクの暴走行為に関する検挙件数が下げ止まっている。県警の取り締まり強化が功を奏し、ピークだった2008年の約2300件から大幅に減少したものの、直近10年は約230~430件と横ばいだ。かつての「暴走族」とは異なり、空ぶかしを競う「コール」合戦が増えているほか、暴走行為も交流サイト(SNS)を駆使して少人数でゲリラ的に行っている。記者が現場を取材した。(社会部・垣花きらら、豊島鉄博)
10月31日午後10時、派手なメークや衣装に身を包んだ人々で、ハロウィーン一色に包まれた北谷町美浜のアメリカンビレッジ。周辺ではパーツに「打倒県警」などと書いたり、装飾ライトやモールなどで飾ったりしたひときわ目立つバイクが15台ほど集結していた。
暴走行為はないものの、エンジンを高回転でリズミカルに空ぶかして技術を競い合う「コール」合戦が繰り広げられた。「ブォン ブォン ブォォォーン」と爆音が周囲に響き渡る。バイクの横では、仲間たちが旗や誘導灯を振り回すなどしてあおっていた。
その周囲を100人以上の「観客」が取り囲み、ショーのように見物。スマートフォンを片手に生中継で動画配信する人もいた。
「コール」に参加していた最年長の男性(24)に話しかけてみた。男性によるとSNSで「コールをやろう」と呼びかけると、15~20歳前後の若者約30人が集まったという。
最近は芋づる式で検挙されるのを避けるため特定のグループをつくらず、SNS上で匿名で不特定多数に呼びかけるやり方が主流になっているという。
県警によると、検挙がピークだった08年は県内で25グループの少年らが検挙された。だが昨年はわずか1グループで、22年はゼロだった。
別の少年(15)は逮捕やけがを恐れ、「昔の先輩たちがやっていたむちゃな暴走はあまりやらなくなった」と説明し、今は「コール」を楽しむ。「エンジン音を楽しむのは今も昔も変わらないんじゃないか」と語った。
こうした騒音の発生は、通報件数にも現れている。17年は約800件だったが、22年は約2800件と3倍以上に増えた。暴走行為とは異なり、エンジンを空ぶかせる「コール」は広範囲に響き渡ることから、通報件数が増えている可能性もある。ただ、空ぶかし行為だけでは「検挙は難しい」(県警幹部)という。
県警は12年、暴走族対策として全国で初めて「白バイ遊撃班」を発足し、取り締まりを強化。一定の効果が現れているとするが、直近10年の検挙数に大きな変化は見られない。
県警幹部は「かつては1カ所で暴走行為を繰り広げる少年が多く、証拠収集もしやすかった」と振り返る。だが近年は、中南部から北部まで広範囲の暴走行為が目立ち、対応が難しくなっているという。
前述の24歳男性は「暴走行為は今、SNSで人を集め、少人数でゲリラ的に行っている」と明かす。
県警幹部は「以前より対応が困難な状況になっているが、危険な行為には引き続き取り締まりに力を入れていく」と述べた。
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