1日日曜日の朝早く、大阪市西成区に現れたオレンジの集団。
その目的は、強制執行です。

日雇い労働者の街の象徴となってきた「あいりん総合センター」で寝泊まりを続けてきたホームレスの強制退去と不法に置かれた荷物の撤去が、1日、大阪地裁によって行われたのです。

1970年に開設された「あいりん総合センター」。

建物には職業安定所などが入り、「寄せ場」と呼ばれるスペースでは、その日の仕事を求める人たちと求人活動をする業者などでにぎわってきました。

しかし、耐震性の問題から建て替えが決定。

2019年、センターが閉鎖される日には「シャッター閉めるなー!」「俺ら3時から仕事探してるんや」「俺たちの仕事邪魔しやがってよー」などの声や、シャッターの真下に座り込む人の姿が。

センターの閉鎖に反対している約300人の労働者たちで大きな騒ぎとなりました。

さらに、大阪府の職員が突き飛ばされ、救急車で運ばれる事態となりました。

その後センターは閉鎖され、日雇いの求人活動は近くの駐車場で行われてきました。

一方、センターの敷地では、その後もホームレスが寝泊まりする状態が続き、荷物を置くなど不法に占拠していたことから、大阪府は立ち退きを求め裁判を起こしました。

訴状を受け取った人:
(いつもどこで寝ている?)ここで寝ている。建物を壊すのはナンセンス。それを大いに訴える絶好のチャンスがやってきたと思っている。

本来であれば、2021年に建て替え工事を始める予定でしたが、裁判もあって計画は遅れ、2024年5月になってようやく立ち退きを命じる判決が確定しました。

そして1日、センターの周囲は高さ3メートルのフェンスで囲われた上、敷地に立ち入れないよう周辺を封鎖。

不法に置かれていた大量の荷物は、次々とトラックで運ばれて行きました。

突然の強制執行に立ち尽くす人、荷物を持って立ち去る人、「きょういきなりやで!吉村(大阪府知事)のくそー!」と大阪府のトップを名指しで毒づく人もいました。

中には布団ごと運ばれる人まで。
その他、帰ってきたらすでに撤去が始まっていたため中に入れず、荷物だけを受け取る人の姿もありました。

退去させられた人:
知らんかった、予告なしで。ちょっとぐらい張り紙してくれたら。(いつか来るかなと?)それは思っている。

そして、着手から3時間ほどがたったころ、センター前で炊き出しなどを行ってきた支援者らが抗議を始めました。

抗議する支援者:
いつまで封鎖するねん。通られへんがな。大阪府も警察も恥ずかしくないんかいな、野宿している人を追い出して。

抗議は次第に激しさを増し、至る所で警察とのもみ合いへとエスカレート。

「触るな!人の体に。1人を囲むなっつってんだ」「あんたらがおるから危ないねん。どーいーて!」「こら おい!」「警察帰れ!」「隊長!隊長がしっかりやれ!市民のためにならんぞ!何やお前、責任者やろが!下っ端は向こう行っとけ」などといった抗議活動で、現場は一時騒然となったものの逮捕者はゼロ。

何とか強制執行は完了し、建て替え工事に向け、事態はようやく動き出しました。

吉村洋文知事は、今回の強制執行について「我々も福祉的な対応措置をしているが、占有されている人がいる。そして非常に危険な建物の状態になっている。(強制執行について)ご理解いただきたい」と理解を求めています。

建て替え工事が3年ほど遅れている「あいりん総合センター」。
強制執行を機に、工事は無事に始まるのでしょうか。

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