ドキュメンタリー映画の一場面。藤野知明さんの姉(後方)は子供の頃から面倒見が良かったという=©2024動画工房ぞうしま

 映画監督の藤野知明さん(58)が、20年以上にわたり統合失調症の姉を巡る家族のやりとりを記録したセルフドキュメンタリー映画「どうすればよかったか?」を制作した。7日に各地で公開が始まり、早くも話題となっている。

藤野さん、試写会で葛藤振り返る

 統合失調症は感情や考えをうまくまとめられなくなり、幻覚や幻聴、妄想、認知機能の低下といった症状が出る。100人に1人ほどが発症するとされる身近な精神疾患だ。詳しい発症原因は明らかになっていないものの、薬物療法などで症状の緩和が期待でき、早期発見が肝要とされる。

 計約80時間にわたる記録を1時間41分にまとめた作品では、姉の自宅での様子や、ともに研究職の医師である両親の対応、家族との対話を試みる藤野さんの葛藤などをあぶり出している。

 11月27日に札幌市中央区の映画館・シアターキノで開かれた試写会後、藤野さんは「姉の状況を両親がくみ取っていなかった。姉を医療から遠ざける選択はしばらく理解できなかった。延々口論してきた」などと説明した。

 作品では姉の徘徊(はいかい)を防ぐため、両親が玄関ドアのチェーンロックをさらに南京錠で施錠していた様子も描かれる。藤野さんは、「姉は十分な医療的ケアは受けていなかった。我が家は間違いなく失敗例」と語りつつ、「姉が2021年に亡くなり、それから編集を始めた。姉はもっと早く治療を始めていたら、もっと(症状が)軽く済んだのではないかな。(作品を世に)出さない選択肢もあったが、僕としてはオープンにして、同じようなことが起きないようにできないかと考えた」と話した。

 7日に各地で公開が始まり、ヒューマントラストシネマ有楽町(東京)はX(ツイッター)で7~9日の満席を発表。藤野さんの出身地である札幌では14日から、シアターキノで公開される。【谷口拓未】

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