部下の女性に性的暴行を加えた罪に問われている大阪地方検察庁の元検事正の男は、10日、一転し無罪を主張すると表明。
一方、被害を訴える女性検事は、11日、会見を開きました。
訴えたのは“被害を申告することの難しさ”、そして、“検察の二次被害への理解のなさ”です。
■大阪地検元検事正の男が一転、無罪主張 被害を訴える女性検事が会見
【被害を訴える女性検事】「無罪を主張していることを知り、絶句し、泣き崩れました。今の率直な気持ちを申し上げると、被害申告なんてしなければ良かった。
被害申告したせいで、私を自分の恥をさらしただけで、大切なものを全て失ってしまった。
組織のトップから受けた性犯罪被害を訴えることが、これほど恐ろしく、これほどまでにひどく傷つけられ続けることだなんて思いもしなかった。被告人がどうのように主張しようが真実は1つです。司法の正義を信じます」
手を震わせながら無罪主張を聞いたときの思いを語る、大阪地検の女性検事。
性被害を受けたと訴える相手は、当時の上司で大阪地検の“トップ”検事正だった北川健太郎被告(65)です。
二度目の会見を開いた女性検事。
どうしても世間に伝えたい事がありました。
■ことし10月の初公判では「公訴事実を認め、争わない」姿勢を示す
北川被告は、6年前、自身の検事正就任祝いを兼ねた懇親会の席で、酒に酔って抵抗できない状態となった部下の女性検事に対し、当時住んでいた自身の官舎で、性的暴行を加えた罪に問われています。
ことし10月の初公判で、検察側は「被害者は泥酔状態で官舎に連れ込まれ、気が付いたときには性交されていた。『やめて』と言ったが、『これでお前も俺の女だ』と言われ、抵抗すれば殺されるという恐怖を感じた」と指摘。
逮捕当初、容疑を否認していた北川被告ですが、初公判では法廷で「争わない」姿勢を示しました。
【北川健太郎被告】「公訴事実を認め、争うことはしません。被害者に深刻な被害を与えたことを反省し、謝罪したい」
初公判後に女性検事は…。
【被害を訴える女性検事】「もっと早く罪を認めてくれていたら、もっと私は早く被害申告できて、この経験を過去のものとして捉えることができて、また新しい人生を踏み出すことができた」
■「同意があると思っていた」と、初公判から一転して無罪を主張
しかし10日、事態が一変。
新たな弁護人が会見を開き、無罪を主張する方針を明らかにしたのです。
【中村和洋主任弁護士】「今後、裁判では無罪を争う方針です。北川さんには事件当時、Aさん(女性検事)が抗拒不能であったという認識はなく、同意があったと思っていたため、犯罪の故意がありません。従って、無罪(を主張する)ということになる」
当初は、「検察庁にこれ以上迷惑をかけたくない」との思いで、争わない姿勢だったものの、その後の検察庁への批判などから主張を変更。
「同意があると思っていた」「女性が抵抗できない状態だったか、合理的な疑いがある」と、女性検事の主張とは真っ向から対立することになったのです。
■女性検事が訴える “二次被害”への理解のなさ
そして、11日、会見を開いた女性検事。
北川被告の突然の無罪主張を聞いた時の心情については…。
【被害を訴える女性検事】「夜も眠れず、胸が痛み、息をするのも苦しく、けさ登校する子どもの前でも涙が止まりませんでした。
性犯罪事件において、どのように主張すれば逮捕や起訴を免れやすいか、無罪判決を得やすいかを熟知した検察のトップにいた元検事正が、主張を二転三転させて被害者を翻弄(ほんろう)し、世に蔓延(まんえん)する、『同意があったと思っていた』などと、姑息(こそく)な主張をして無罪を争うことが、私だけでなく、今まさに性犯罪被害で苦しんでいる方々を、どれほどの恐怖や絶望に陥れ、被害申告することを恐れさせているか」
そして、北川被告の『同意があると思っていた』、『抗拒不能だったか疑いがある』との主張については。
【被害を訴える女性検事】「被告人は、ろれつも回っていて、足取りもしっかりしていた程度の酔い。
懇親会で私が机に突っ伏して寝ていたり、店を出た後、ろれつが回らなくなっていたり、店を出た後、被告人と女性副検事から両脇、体を支えられながら、ふらつきながら歩いていた様子だったり。
被告人は当然、私が飲酒酩酊(めいてい)によって、物理的にも抵抗することが著しく困難な状態である、抗拒不能であることを十分に認識していたと言える」
女性検事の苦しみは今も続き、1年前にPTSDと診断され、休職を余儀なくされました。
しかし、女性検事は被害を申告した後、同僚の副検事から事件について、「虚偽告訴」などといった誹謗中傷や、捜査の妨害と疑われる行為があったことを知り、再び働くことが困難になってしまったのです。
【被害を訴える女性検事】「誹謗中傷は大阪地検だけでなく、最高検や東京地検、法務省にまで広まっており、起訴前の時点で被害者が私であることや、夫の個人情報まで広まっていたことも最近知りました。
私は孤立させられ、職場が安全でなくなり、病休に追い込まれました。私の傷つけられた名誉を回復させるような措置も、いまだ何一つ講じられていません」
そして、改めて北川被告に対し、処罰感情をあらわにしました。
【被害を訴える女性検事】「自己保身ゆえに、再び否認に転じたのだと思います。検察トップが犯した重大な罪で、被害者を傷つけ続ける無反省で無神経な言動に見合った、長期の実刑判決を求めます」
(関西テレビ「newsランナー」2024年12月11日放送)
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