太平洋戦争下の1942年2月3日、海底坑道の水没事故で朝鮮半島出身の労働者136人、日本人労働者47人の計183人が亡くなった「長生(ちょうせい)炭鉱」(山口県宇部市)で遺骨収容の調査をしている水中探検家、伊左治佳孝さん(36)が11日、国会内で記者会見した。来年1月末に始まる本格調査では、多くの遺骨が残ると思われる坑口から300~400メートルまでの到達と収容を目指すとし、「遺骨を見つけることができるのでは」と語った。
伊左治さんは、洞窟など水中の閉鎖環境に潜水する専門家。昨年12月に東京都内で開かれた集会で遺骨の問題を知り、協力を申し出た。今年10月29、30両日に事故後初めて坑道に入り、潜水調査した。海底の坑道から海面上に突き出した「ピーヤ」と呼ばれる排気・排水用の円筒が2本あり、初日は岸に近いピーヤから入った。透明度が低く、パイプなどで妨げられ坑道には進めなかった。2日目は岸辺にある坑道の入り口から坑道を約100~200メートル進んだ。遺骨は見つからなかったが、水中調査が可能なことを確認し、「継続して潜水すれば遺骨の収容につながるはず」と手応えを感じていた。
伊左治さんは会見で、長生炭鉱の調査でトラブルがあったときに浮上できないことや透明度の低さ、坑道崩落などの危険性と対策を述べ、「リスクは解消できる」と話した。一方、一度ですべて収容するのは困難で、継続的な収容のために坑口補強などが必要なことも指摘した。
調査は地元市民らが構成する「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」が行っている。新たな調査は来年1月31日~2月2日に行う予定。今後の課題として、長年水につかっていた坑口が空気に触れたことで急速に劣化する可能性が挙げられる。混濁した坑道内で遺骨を収容するのは容易ではない。さらに、同会は収容した遺骨の身元判明のためのDNA鑑定も視野に入れており、新たな資金調達も必要となる。
刻む会は日本政府に遺骨の調査と収容を要請していたが、政府が「埋没位置や深度などが明らかでなく、現時点で調査は困難」などと動かないことから、クラウドファンディングで資金を募り独自の調査に踏み切った。重機で地面を掘削し、今年9月下旬、事故後に閉じられた坑口を海岸の地下約4メートルで発見していた。【栗原俊雄】
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