警察庁はクレジットカードの不正利用対策でカード会社との連携を強化する。悪用リスクが高いカード番号を各警察から警察庁が集約し、米VISA(ビザ)など国際カードブランド側に伝達。早期に利用を停止し被害の抑止を図る。不正利用被害は過去最悪の状況だ。消費者がキャッシュレス決済を安心して使える環境整備を急ぐ。
19日の国家公安委員会で報告され、警察庁は同日から運用を始めた。カードブランドを通じた情報共有の取り組みは、政府が6月の犯罪対策閣僚会議でとりまとめた総合対策にも盛り込まれていた。
クレジットカードの名義や番号を犯罪組織に把握されると悪用される危険が高まる。不正利用を防ぐためには一刻も早く利用を停止する必要がある。
詐欺事件などの捜査で、犯罪組織から押収した資料や個人情報が売買される「ダークウェブ」上にクレジットカード番号の記載があると判明するケースは少なくない。各警察は不正利用の恐れがあるとしてカード発行会社へ個別に情報提供してきた。
警察庁によるとカード発行会社は国内に約240社ある。番号のみでは発行会社が分からないため、各警察はカードブランドへ照会する必要があった。情報提供の方法も発行会社によってメールや電話などに分かれ、情報共有に時間がかかっていた。
新たな運用ではまず、警察庁が都道府県警の捜査で浮上したカード番号を集約する。警察庁からビザやマスターカード、JCBなど国内シェアが合計で9割超を占める6ブランドの各日本法人へ情報提供する。カード発行会社へはブランド各社から共有する。
カード発行会社には素早く利用停止の措置を講じてもらい、利用者に連絡のうえカードの差し替えを提案するといった流れを想定する。
不正利用被害は深刻な状況が続いている。一般社団法人日本クレジット協会(東京)によると2023年の被害は540億9千万円に上った。神奈川県警が23年に摘発した詐欺事件では押収したパソコンから約1万7千件に上るクレジットカード番号が発見された。
情報を盗み出す手口も巧妙化している。警察庁によると、国内の約40企業・団体が運営する電子商取引(EC)サイトに情報を盗み取る不正なプログラムが組み込まれていたことが判明した。カード番号を含む30万件超の顧客情報が漏洩した恐れがある。
クレジットカード業界もECを通じた不審な取引情報を共有するシステムを構築し、商品発送を素早く停止する対策を始めた。キャッシュレス決済の普及に向け、安全性の確保が喫緊の課題となっている。
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