高濃度メタンが検出された米アラスカ州のキャスナー氷河。土砂が混じり茶色っぽくなった氷河の底部を濁流が流れる=2021年6月26日撮影(末吉哲雄・国立極地研究所特任教授提供)

 米アラスカ州の氷河を起源とする河川から、通常の最大40倍となる高濃度メタンが検出されたと、国立極地研究所や海洋研究開発機構などのチームが発表した。周辺の大気中のメタン濃度も3倍高かった。メタンは二酸化炭素より二十数倍も強い温室効果を持つ。地球温暖化対策を考える上で、どのような仕組みで氷河中に蓄積されたか解明が急がれる。

 氷河には南極やグリーンランドに存在する「氷床」と、山脈を覆う「山岳氷河」がある。チームは2019年から、多数の山岳氷河が広がるアラスカ州の4氷河(全長20~40キロ)から溶け出た河川や周辺大気の成分を調べた。

 その結果、中南部のキャスナー氷河など3氷河の融解直後の水に、一般河川より2~40倍濃度の高いメタンが含まれていることが分かった。水面からの放出量は通常の6倍で、周辺の大気中濃度も地球平均の3倍にあたる6㏙を記録した。

 近年、北極域では大気中のメタン濃度が急速に増えており、今回の発見はその一因の解明につながる可能性がある。海洋機構の紺屋恵子研究員(雪氷気象学)は「温暖化で解けた氷河からメタンが放出されることで、温暖化がさらに加速するという悪循環に陥りかねない。観測を強化していきたい」と話す。

 研究成果は5月9日付の英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載された。【田中泰義】

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