名古屋大学の木村康裕助教らは、ナノ(ナノは10億分の1)メートルサイズの金属製繊維「金属ナノワイヤ」を簡単に合成する手法を開発した。加熱などによって金属原子を1カ所に集積させ、ナノワイヤを成長させる。新たな光学材料の開発につながる可能性がある。成果は米科学誌サイエンスに掲載された。

アルミニウムのナノ繊維が基板上に成長していく(木村助教提供)

ナノサイズの繊維は次世代材料として注目されている。金属製のナノワイヤは金や銀、アルミニウムなどの種類が知られ、光に対して特殊な性質を持つためLiDAR(ライダー)のような光学センサーや光学素子に応用できる。一方、金属ナノワイヤの合成は難しく、普及の課題になっていた。

研究グループはアルミニウムのナノワイヤを大量合成する手法を開発した。アルミニウムと酸化アルミニウムでできた薄膜をシリコン基板に貼った材料を作り、表面にイオンビームを照射する。

次に材料をセ氏300度程度で加熱すると、表面にアルミニウムのナノワイヤができた。直径は100~300ナノメートル、長さが最長で数百マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルだった。触媒や薬剤などが不要で、安価に合成できる。

金属ナノワイヤの合成法は1970年代から活発に研究されていたが、簡単な作製方法が開発されず研究が下火になっていた。大量に合成する手法が確立されれば、様々な製品への利用が期待される。今後はアルミニウム以外の金属でも同様の方法でナノワイヤを合成できるか検討するほか、大量に合成する手法の開発を目指す。

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