大阪国際がんセンターは26日、乳がんの治療について患者の疑問に答える生成AI(人工知能)を導入したと発表した。約300種類の質問に回答できる。内容は医師が監修した。診療現場では医師が患者に説明する時間が十分取れないことが多い。AIで患者の不安軽減や業務効率の改善を狙う。

医師のアバター(分身)との対話形式で質問できる=日本IBM提供

乳がんの診療では、患者に合わせて治療法を選択する。医師による病気や治療方針の説明には1時間程度かかり、患者から多くの質問をするのがはばかられる場合もある。

大阪国際がんセンターは3月から医薬基盤・健康・栄養研究所や日本IBMと共同研究を進め、このほど運用を始めた。IBMのAI「ワトソンX」を基盤に、関連学会や大阪国際がんセンターのもつ乳がんに関するデータを活用して開発した。

患者はパソコンやスマホからアクセスして利用する。「ホルモン剤の副作用にはどのようなものがありますか」「この先妊娠は可能ですか」などと質問すると、AIが回答文を生成して表示し読み上げる。初めてがんの診断を受けた患者を中心に、主に治療を実際に始める前に使ってもらう。病気と治療についての情報を患者に提供して不安の軽減を狙う。

試しに利用した患者からは「確かな情報が得られる」「家族も一緒に疑問を解消できる」「診察中に医師へ質問するのは申し訳なさがあるが、AIには何回も質問でき不安を和らげられた」と評価する声があったという。

大阪国際がんセンター乳腺・内分泌外科の中山貴寛主任部長は「答えられる質問数が300弱ではまだ不十分で、増やしていきたい」と話した。今後は1月あたり最大50人程度の患者に利用してもらい、患者の感想をもとに機能を改善する。2025年初めには食道や胃などの消化器がん向けに同様のAIの運用を始める予定だ。

また、患者が臨床研究に参加する際の説明や同意取得についても同様のAIを開発しており、24年10月中にも運用を始める。来院時の症状などを聞き取る「問診AI」や、看護師の情報共有のための会議記録を自動で生成するAIなども開発しており、25年初めの運用開始を目指す。

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