ウナギの稚魚はドンコに食べられても食道を逆流しえらから脱出していた=長崎大学提供

長崎大学の研究チームは、ニホンウナギの稚魚がより大きな魚に丸のみにされても、胃袋を抜け出して、えらから逃げる様子を捉えた。ヒトの胃の検査のように、造影剤とX線を使って魚の内部を観察した。

チームは、ウナギの稚魚をドンコという肉食の魚に食べさせる実験をした。ウナギの稚魚には造影剤のバリウムを注入し、X線を使ってドンコの体内の様子を動画で撮影した。

頭から丸のみにされたウナギの稚魚は、ドンコの胃の中に達した後、尾を食道へ差し込み、後ろ向きに泳いで後ずさりした。その後、えらの隙間から尾を出し、頭を引き抜いてドンコの外に出た。完全に胃の中にのみ込まれたときは、ぐるぐると回転する様子もみられた。

実験でドンコに捕食されたウナギの稚魚32匹のうち、9匹が脱出に成功した。脱出には平均56秒かかっていた。脱出に失敗したウナギは胃や食道内で弱っていき、平均200秒ほどで完全に動かなくなった。

チームは、2021年にウナギの稚魚がドンコのえらから逃げ出す行動を発見していた。ただ、捕食者の中での詳細な様子は不明で、ドンコの口から直接えらへ脱出していると予想していた。長崎大の長谷川悠波助教は「ウナギの細長い身体や後ろ向きに瞬発的に泳げる性質が脱出行動に関係しているのでは」と話す。

ニホンウナギの資源量は著しく減少していて、乱獲や生息環境の悪化が原因とみられている。日本のウナギ養殖は全て天然物のシラスウナギを使っており、漁獲量の減少がウナギ高騰を招いている。

ニホンウナギは太平洋のマリアナ諸島付近で産卵し、ふ化後は幼生からシラスウナギに成長しながら日本に泳ぎ着き成長するとされているが、詳細な生態は謎が多い。卵から人の手で育てた稚魚を親にし、その親からとれた卵をふ化させる「完全養殖」の研究開発も進む。

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