TDKは2日、東北大などと組み電力消費を抑えられる人工知能(AI)半導体を2027年までに開発すると発表した。画像処理半導体(GPU)のAI処理と比べて消費電力を100分の1に抑えられるという。AIは計算時に大量の電力を使うため、世界のAIデータセンターの電力消費量は急増しており、電力効率の高い半導体が求められている。
フランスの原子力・代替エネルギー庁と組み、データの演算や保存を担う半導体素子「スピンメモリスタ」を開発した。人間の脳の仕組みを電気的に模倣した構造となる。数字の0と1を使ってデジタル処理するAIに比べて、複雑な計算を効率的に手掛けられるようになる。今後は東北大と組んで27年までに実用化し、30年の量産技術の確立を目指す。
一般的なAIは事前に大量のデータを学習し、論理モデルをもとにAIを動かす。今回の半導体では、今起きていることをリアルタイムに学びながらAIが推論することができる。実証実験では、事前に学習していない3つの音源を混ぜて学習させたところ、それぞれの音をその場で聞き分けて、音源を再現することができた。
TDKの試算では、データセンターで消費される電力量は2030年に18年度比で5倍に増える。電力を制御するパワー半導体などの需要が高まっているが、AIそのものの消費電力を抑えるニーズも大きい。
TDKはHDD(ハードディスク駆動装置)の磁気ヘッドなどの磁性素材や製造技術を応用した。佐藤茂樹最高技術責任者(CTO)は「まずは自社で手掛けるセンサーと組み合わせてデータ処理に使う。ロボットや空調の制御などの用途が見込める」と話した。
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