日本のような「蒸し暑さ」のリスクの有効な測り方が分かった(7月、東京都千代田区)

東京大学の研究チームは、暑さによる死亡リスクを調べる上で気温以外に湿度も考慮した指標が日本、米国の沿岸部など海や湖の近くで有効だと突き止めた。世界の739都市を対象にした大規模調査で明らかにした。国や地域ごとに最適な熱中症への警戒情報を発信する方策作りに役立てる。

暑熱リスクを評価する手法は世界で100以上提案されている。気温単独のほかに湿度や風、日射など複数の気象情報と組み合わせた「湿熱指数」で評価する。

今回は世界43カ国・地域の739都市を対象に、8つの湿熱指数のうち、どの指数が死亡リスクを知るのに有効かを調べた。過去の観測から作った計算モデルで1日ごとの気象データを再現し、指数と死者数との関係性を40年分分析した。

その結果、日本では湿熱指数の一つで、熱中症警戒アラートを出す基準に採用する「暑さ指数(WBGT)」がリスクを把握するのに最適だと分かった。日本のほか米国の沿岸や五大湖の周辺地域、ペルーや韓国ではWBGTが最も死亡リスクを正確に表していた。

一般的に内陸では温度が上がれば湿度が下がりやすいが、日本のように海や水辺が近いと高温で蒸発した水を多く含む暖かく湿った空気が入り込むケースがある。「蒸し暑さ」が生まれる要因で、WBGTは気温単体よりも実態を表せる特徴がある。また、最適な指標は都市によって異なる。湿度を考慮せず気温単独で評価した方がリスクをより正確に示せる都市が最も多かった。

研究グループは従来の研究で、指標の有効性は日本国内でも地域差があると示している。東日本に比べて西日本の方がよりWBGTが有効に働くなどの地域差も明らかにしてきた。

WBGTは気温のほかに熱と湿度の3つを組み合わせる。熱中症警戒アラートでは通常生活なら25以上28未満で警戒、28以上31未満で厳重警戒、31以上で危険とし、激しい運動には別の値を用いる。

単位には気温と同じ「セ氏度」を用いる指標だ。今後さらに社会へと浸透させるには課題もある。研究チームに加わった東大の沖大幹教授は、「日本がWBGTを使うこと自体は有効だと分かった。より多くの人に熱中症予防へ役立ててほしい」と語る。

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