最先端半導体の量産を目指すラピダスが出資企業に議決権を付与することが18日、分かった。株主が経営に関与できる体制を整える。同日、トヨタ自動車やデンソーが追加出資する意向を示したことも明らかになった。既存株主8社全てが追加出資する意向を示したことで、目標とする1000億円の民間資金の調達に前進する。
トヨタは同日「次世代半導体の生産基盤を日本に作る設立趣旨に賛同しているため、追加出資に向けて検討を進めていく」とコメントした。佐藤恒治社長は「(関係各所と)連携を取ってしっかりと産業として守っていく必要がある」と話した。デンソーも追加出資の意向をラピダス側に通知した。
自動車では、自動運転やソフトウエア定義車両「SDV」向けに半導体の重要性は高まっている。トヨタやデンソーは台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県で建設中の工場運営子会社にも出資を表明するなど、半導体関連の調達網拡大を進める。
ラピダスは2022年8月に設立され、トヨタやデンソーのほかソフトバンク、NTTやソニーグループ、NEC、キオクシアが各10億円、三菱UFJ銀行が3億円の計73億円を出資した。事業会社全てが18日までに追加出資の意向を示した。三菱UFJ銀行などメガ3行と日本政策投資銀行も最大計250億円を出資する方針。新たに富士通も出資する方向だ。
民間による追加出資は装置の購入代金など資金需要が発生する25年後半になる見通し。各社の出資額は今後協議して決める。
ラピダスは27年の量産までに計5兆円が必要だと試算する。これまで経済産業省が計9200億円の支援を決めたが、量産の実現にはさらに4兆円規模の資金が必要となる。巨額の投資を国の補助金のみに頼ることを懸念する声もあり、民間企業からの出資など資金調達の多様化が求められている。
ラピダスは10月1日付でソニーGで執行役員財務担当を務めた村上敦子氏を最高財務責任者(CFO)として招いた。国内の電機・半導体や自動車メーカーなど、既存株主以外にも出資を要請する考えだ。
追加出資を決めた株主の中には、ラピダスへの大規模な出資に慎重な見方もある。ラピダスが技術開発や顧客開拓で目に見える成果を示せていないためだ。ラピダスが量産を目指す最先端半導体についてトヨタ関係者は「自動車向けでは30年代になっても需要はそこまで大きくない」と話す。
こうした背景もあり、ラピダスは出資企業に対して出資額に応じた議決権を付与する方針を固めた。既存株主8社には議決権がほとんど与えられていなかった。各社がラピダスの経営に関与できるようにすることで、追加出資に向けた議論を円滑に進める。経営の透明化を進める狙いもある。
ラピダスと民間企業の出資交渉は今夏から本格化し、経済産業省も交渉に同席してきた。
政府は6月に閣議決定した「骨太の方針」で今後の半導体支援について「複数年度にわたり、大規模かつ計画的に」と明記した。政府はこの方針を踏まえて政府機関による出融資や、ラピダスに対する金融機関の融資に債務保証をつける法案の早期提出を目指す。民間出資の拡大により、法整備の議論に弾みがつくことを期待する。
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