東北大発の宇宙ベンチャー「エレベーションスペース」(仙台市青葉区)が、宇宙空間から地球に回収するカプセルを開発し、その海上回収を想定した着水衝撃試験を福島ロボットテストフィールド(福島県南相馬市)で実施した。同社は宇宙環境を基礎研究から産業利用にまで幅広く利用できるサービスの提供を目指しており、その輸送手段となる。【錦織祐一】
日米などが参加する国際宇宙ステーション(ISS)は老朽化のため2030年で運用を終える見通し。宇宙環境を利用できる場の確保が課題となる。
同社は東北大で小型人工衛星を開発してきた小林稜平さん(26)らが21年2月に創業した。顧客から預かった試料を小型衛星で地球周回軌道に載せ、地球に帰還させて無重力状態や宇宙放射線などの影響を調べるサービス「ELS-R」の26年早期の初号機打ち上げを目指している。初号機の試料の搭載量は、バイオベンチャー「ユーグレナ」などによって上限に達した。大気圏への再突入が実現すれば、国内の民間企業で初となる。
23年4月には南相馬市と連携協定を結んでおり、福島イノベーション・コースト構想推進機構の支援も受けている。大気圏再突入の後に速度を落とすパラシュートは田村市に工場がある「藤倉航装」の技術を使用する。
4月24日の試験はロボットテストフィールドの屋内水槽試験棟を使った。衝撃を和らげるよう独自開発した形状のカプセル(直径約50センチ、高さ約50センチの円錐台)を5メートルの高さから秒速7メートルでプールに着水させ、衝撃などのデータを計測した。
同社の藤田和央(かずひさ)CTO(最高技術責任者)は元宇宙航空研究開発機構(JAXA)教授で、小惑星探査機「はやぶさ」「はやぶさ2」の大気圏再突入技術をけん引した。「実験は、現段階では120点。データを精査して今回の設計が正しかったかを確認し、さらに新しい技術を取り入れたい」と話した。
今後は9月にも福島沖で実際にヘリコプターから海上に着水させ、GPS(全地球測位システム)で位置を確認して回収する試験を行う。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。