知っている人も知らない人もいると思いますが、4月8日は「タイヤの日」でした。

 この日は日本自動車タイヤ協会が全国でタイヤ点検等を実施したりしますが、やはりタイヤのサービスマンにとっても特別な日なんですね。

 商用車専門のタイヤマン・ハマダユキオさんは、今年の「タイヤの日」にタイヤの進化について思い巡らしていました。

文/ハマダユキオ、写真・イラスト/トラックマガジン「フルロード」編集部、ハマダユキオ・ブリヂストン

クルマの進化とともにタイヤも進化しています

タイヤは地味でありながら重要なパーツの一つ。タイヤが無ければ高性能な車両も1ミリも動きません

 「タイヤの日」を4月8日としたのは、春の全国交通安全運動の 実施月である4月ということ、8は輪(タイヤ)のイメージからとったものだそうです。

 目的は「広く一般ドライバーにタイヤへの関心を喚起し、タイヤの正しい使用方法を啓発することにより、交通安全に寄与する」ということ。

 新型車両の発表や新車納車時には、ほとんどがクルマの外観、内装のデザインや装備等に目がとまり、進化しているタイヤやパターンデザインはあまり注目されないという印象ですね、まぁ私もそうですが……(笑)。

 モーターショー等のコンセプトカーに装着されるタイヤは現行ではないデザインだったりするので、その時は多少注目はされるでしょうが、クルマのパーツの中では機能、安全面ではかなり重要なポストでありながら、やはり印象の薄さは否めません。

 自動車の内燃機関よりも車輪という括りでは大先輩な車輪があります。紀元前3000年頃のメソポタミア文明から、馬車や荷車に使用された車輪がそれですです。

 以来、より多く快適にモノを動かすことに貢献しつつ、材質も壊れにくく早く転がることを使命に進化を続け、約150年前に空気入りタイヤの車輪が発明され、今日も進化し続けているのがタイヤです。

 ゴムを使用し、それに空気を入れ完成するタイヤ。未舗装路や歴史ある石畳、雨でのウエット路面、凍結、積雪路等など。車内で音楽を聴いたり会話したり運転手以外は寝ていたり、荷物への衝撃を和らげ長い距離をその性能を維持して運行できるのは、車両の進化と共にタイヤの進化も無視はできません。そして近年はエコに進化しているパーツの一つです。

生まれ変わるタイヤ

空気入りタイヤ故のバーストやパンクによる故障。廃棄されるタイヤの約20%くらいは摩耗末期の交換時期まで使い切れていません

 使用済みタイヤ、野積みや海等への不法投棄が話題になることがありますが、タイヤはさまざまな部材でできている製品で「再利用」するのはなかなか大変です。

 しかし、最近ではさまざまな取り組みにより、環境負荷の低減やサステナブルな素材を使用したタイヤでクルマを支え、その後もいろいろなカタチで社会を支えております。

 タイヤは可燃物です。つまり上手に使えば燃料となります。用済みタイヤを専用の剪断機でチップ状にして工場のボイラー等の燃料になっています。当然タイヤを燃やせばダイオキシン等が発生する可能性が高いため、この辺りの抑制対策はキッチリ実施されてるようです。

 このチップ状になったタイヤの他での利用は、クッション性が必要な陸上競技場や道路で使用される舗装の充填材(弾性骨材)として生まれ変わります。廃タイヤを使用した弾性骨材は排水性舗装路の強化、骨材の飛散抑制、走行音の低減、凍結抑制とかなり高性能な舗装路に仕上がります。

 また タイヤは主にゴムとタイヤの骨のような役割のスチール性のワイヤーが使用されてます。このスチール性のワイヤーは全てタイヤのゴムの中にあり、簡単に分解できるモノではないのですが、これも専用の分離機でゴムとスチールを分離し、各々再利用されます。

 ゴムの多くはやはりタイヤの部材へ使われ、一部は靴等に使用されているようです。分離されたスチールはクルマや家電の部材に変化されます。

寿命を延ばすリトレッドタイヤ

 トラック・バス用のタイヤは、新品から交換レベルまですり減ったタイヤは一次寿命と呼び、すり減ったタイヤのトレッド部分だけ新しいゴムを貼付け二次、三次寿命まで使用する「リトレッドタイヤ」があり、日本でも少しずつ浸透しつつあります。

 これはトラック・バス用のみとなり、乗用車用はありません。トラック・バス用タイヤは走行距離が短い期間でかなり走るため、タイヤ本体の劣化が少なく、サイズもある程度メインサイズを製造すれば賄えます。乗用車用となるとサイズや品種が膨大な数になるのでリトレッドはないのではないかと個人的には思います。

 少し話が逸れましたが、現在使用されているタイヤは正しく処理されればサステナブルな製品なのであります。

 さらに最近では製造する素材の見直しで、廃タイヤから回収したゴムの他に廃プラスチック植物性廃棄物、包装ゴミやタイヤに配合されるものも再生カーボンブラック、ヒマワリ油、籾殻性シリカ等で製造され、以前よりさらに「再生」し易いタイヤが出回り始めています。

未来のタイヤ、エアレスタイヤ

ブリヂストンが新たに開発した月面探査車用エアレスタイヤ

 そしてタイヤの今後の進化で革命的なのは「エアレス」です。文字通りエアが入っていない、つまりエアが必要ないタイヤのことですが、地面との接地面であるトレッド面は従来のタイヤのゴムを使用しているようで、タイヤは空洞ではなくトレッドと車両ハブとの締結部分を強力な弾性のあるプラスチックで繋いだ一体物のイメージの構造です。

 トラック・バス用のエアレスタイヤはまだ無く(開発しているのかどうかも不明)、実用化はかなり先になりそうですが、海外で小型のバン用では既に試されているとか。

 エアレスタイヤが普及すれば、サイドカットやパンクでの低内圧走行によるタイヤの破損がなくなるばかりか、ホイールと一体の構造な為組み換え作業やエア点検、補充といった作業もなくなります。

 近年はあらゆる業界が凄まじい勢いで進化しています。現在の空気入りタイヤが今は昔となる日も近いのかも……、などと、今年の「タイヤの日」に考えてみました。

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