クルマのタイヤサイズは「215/45R17」などと表記される。215は幅、45は偏平率、17はリム径を表すわけだが、途中にあるRっていったいなんなのだろう? ロードのR? それともレーシング?

文/ベストカーWeb編集部、画像/Adobe Stock ほか、メイン画像/hanjosan@Adobe Stock

■タイヤにある「R」はロードでもレーシングでもなく……

タイヤ幅を示す255に扁平率を記す45。その次に多くのクルマで表示されているのがRの文字である(Roman@Adobe Stock)

 いきなり正解をいうと、こいつは「ラジアル」の略。日本語に直すと「放射状の」という意味だ。

 なんでそんなことわざわざ書くのかということだが、そこにはタイヤの構造が関係している。

 自動車用タイヤの主原料はゴムだが、そのゴムから空気が漏れるのを防ぎ、かつクルマの重さを支える骨格のような部分を「カーカス(コード)」と呼ぶ。

 実際のカーカスは、ナイロンやアラミド繊維をゴムで被覆した包帯のようなものなのだが、強度を確保するために、1970年くらいまでのタイヤは、そのカーカスを進行方向に対して斜め(おおむね60度)に貼り合わせていた。

 こうしたタイヤは、カーカスが斜め貼りであることからバイアス(=斜め)タイヤと呼ばれたのだが、実際、このタイプのタイヤは頑丈で、低速で走る分には乗り心地も良く、かつ安価だった。

 ところが1970年以降、クルマが高性能化して運動性能が上がってくると困ったことが起きた。バイアスタイヤは高回転の遠心力に弱いうえに、トレッド面をキチンと接地させることが苦手だったのだ。

実はタイヤとは様々なパーツからできているが、「ラジアル」というのはタイヤの骨格部分にもあたるカーカスの張り合わせ方法から名付けられた(スズキアリーナ鵠沼HPより)

 そこでタイヤメーカーは考えた。カーカスを進行方向に対して垂直に貼れば、遠心力に強いタイヤが作れる。しかも垂直に貼ったカーカスはトレッド部分とサイドウォール部分がはっきりするので、トレッド面は固く、サイドウォール部分はしなやかに特性を作り分けることもできるわけだ。

 こうして高性能化するクルマに見合ったタイヤが出来たわけだが、進行方向に対して垂直に貼ったタイヤは回転軸の中心からみると放射状(=ラジアル)に見える。そこでこうした高性能タイヤを「ラジアルタイヤ」と呼ぶようになったのだ。

 現在でもバイクやバス、トラックなどにバイアスタイヤは使われているが、バイアスタイヤのサイズ表記は「150/80-16」というように「R」の代わりに「-(ハイフン)」が使われる。今度タイヤのサイズ表記を見ることがあったら、130年以上におよぶタイヤの歴史を思い出してほしい。

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