暑い夏がやってくる。2024年の夏は例年以上に暑くなることが予想されているが、皆さんは“夏型事故”という言葉を聞いたことがあるだろうか? 簡単にいえば、夏の暑さに起因する交通事故のことなのだが……。

文/山口卓也、写真/写真AC

■夏型事故とは?

 暑さからくる気の緩み、疲労などによる居眠り、そして漫然運転による交通事故を指している。

 気温が高く、暑さが厳しくなる季節に多発する夏型事故の特徴は、自分の走るべき車線から逸脱したことによる対向車との正面衝突や、電柱などに衝突する単独事故が多く、それらが死亡や重傷といった重大な事故に発展しやすい点。

 山形県警察がまとめた平成26〜30年(5年間)の事故統計によると、5、6月と7、8月の事故件数を比較した場合の後者は約5%増加、死亡事故件数は約23%増加した。このうち、正面衝突と単独事故について調べると事故件数は約16%増加、死亡事故件数は約64%増加したという。

 これは、夏型事故が明確に存在することを示しており、死亡事故件数の大幅な増加からその高い危険性が裏づけられたといえるだろう。

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■夏は渋滞が発生しやすく、長時間運転になりがち

 実は1年で最も事故の多い月は冬場の繁忙期である12月。次いで夏休み期間やレジャーシーズンに入る7、8月の事故が多くなると言われている。7月後半から始まる夏休みになると、普段はクルマを使わない人もクルマを使って遠出する頻度が増え、そのために渋滞が多く発生する。

 渋滞ではノロノロ運転を長時間続けることになり、注意力の低下や渋滞によるイライラがつのって運転中の正しい状況判断ができなくなりがち。ハンドルやブレーキ操作のミスを起こしやすいといわれている。

 毎年、夏の高速道路での玉突き事故がニュースで取り上げられるが、その要因は上記によるものが多いといわれている。

■夏は突発的な気象現象が発生しやすい!

夏休みのシーズンには行楽地は大渋滞。ノロノロ運転を続けると注意力や集中力が大幅に低下して、追突事故のリスクが高まるという

 7、8月は天候が不安定で、ゲリラ豪雨や強風などの突発的な気象現象が発生しやすい。この気象現象に対してドライバーの運転操作が迅速に対応できないことで、思わぬ事故につながりやすいといわれている。

 ドライバーなら経験があるだろうが、雨の日の運転時は視界不良や雨音で外部の音が遮断され、自車に近づくクルマやオートバイなどの音もかき消されてしまう。

 また、ゲリラ豪雨や台風など急な激しい雨風に見舞われると、乾燥路面に溜まっていた砂や土埃と水分が混ざり、通常の雨よりも路面が滑りやすくなる。

 さらに、路面標示や標識、ラインも見えづらくなって事故が起きやすい状況に。

■「子ども」「履き物」にも注意!

 夏休みの時期は、平日の昼間など普段は見かけない時間帯に子どもたちを見かけるようになる。子どもの急な飛び出しも考えられる公園のそば、信号機のない横断歩道などでは、いつも以上に注意して運転したい。

 そして、暑い夏ならではの“履き物問題”もある。

 暑い夏は男性と女性を問わず、日常的にサンダルやかかとがオープンになったミュールなどを履く人が増える。

 しかし、運転時にペダル操作に支障を及ぼさない靴に履き替える人は意外と少なく、脱げやすい靴やカカトが固定されない靴では、アクセルやブレーキペダル操作時にペダルと靴の間に隙間ができることで正しく操作できない。そして反応も遅れがちになる。

 道路交通法では、運転時のサンダル履きを明確に禁止していない。しかし、各都道府県の公安委員会の遵守事項として“違反”と定めている場合がある。これに違反した場合、違反点数はつかないが罰金が科されることになるので要注意!

■夏型事故を防ぐためには?

・少しでも疲れを感じたら適度に休息を取る
・ゲリラ豪雨や台風時にはできるだけ運転を控える。どうしても運転しなければならない場合は強風にあおられることを想定してスピードを控える
・前方の渋滞に気づいたら早めにハザードランプを点灯させ、後続車に知らせる
・車内を涼しく保ち、水分をしっかり取る

■暑い夏の車内は約15分で熱中症の危険レベルに!

気持ちよく寝ているし、5~10分程度で戻ってくるからそのまま寝かしておこうなんてことは絶対にダメ。近年の日本の夏はもはや自分が子どもの頃とは比較にならないほど暑いということを忘れずに!

 夏型事故とはいえないかもしれないが、最後に夏の車内のお話。

「ちょっと離れるだけだから」と子どもやペットを車内に残したままクルマを離れて事故となった、痛ましいニュースが毎年流れる。

 外気温が35℃の駐車場で車内温度の変化を測定したJAFによる実験によると、サンシェードや窓開けなどの温度上昇対策なしの黒いクルマでは、車内温度は平均51℃に!

 しかし、サンシェードや窓開けなどの温度上昇対策を施したクルマであっても、車内温度の上昇を防ぐことはできなかったという。

 一方、エアコンを作動させたクルマは4時間もの間車内温度の上昇を防ぐことが確認されたが、万が一燃料切れでエアコンが止まる、もしくは子どものいたずらでエアコンが止まったら……。

 約5分後には熱中症の警戒レベルを超え、約15分後には人体にとって危険なレベルに達したという。さらに、日なたや日陰に大きな差がなかった点にも注目したい。

 暑い夏は夏型事故に気をつけることはもちろん、「わずかな時間であっても、クルマから離れる場合は車内に誰も残してはならない!」ということも頭にしっかり入れておいてほしい!

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