2023年11月に日本デビューしたボルボ EX30。伝統あるボルボが、その伝統をかなぐり捨てるかのような革新的EVを登場させ、世のクルマ好きを驚かせた。思い切りのいい新しさにテリーさんも大興奮!! イチオシEVに躍り出た!?
※本稿は2024年7月のものです
文:テリー伊藤/写真:西尾タクト、ボルボ
初出:『ベストカー』2024年8月10日号
■これまでのユーザーを失うことを恐れない潔さ
ボルボ EX30は最高のEVだった! 何がいいって、ボルボの伝統や過去の栄光をすべて捨て、新しさだけで勝負しているのが素晴らしい。
ボルボは安全性へのこだわりをはじめとして保守的なイメージが強いメーカーだが、EX30はまったく保守的じゃない。これまでのボルボユーザーを失うことを恐れていないのだ。
なんでも自動だから、カギにはひとつもボタンがなく、エンジンスタートのボタンもパーキングブレーキのスイッチもない。クルマに乗り慣れている人は逆に不安になりそうだが、その不安に寄り添わない潔さがあるのだ。
また、驚くべきことに運転席の前にメーターがない。その代わり、縦型センターディスプレイの上部に速度、ウインカーの表示、シフトポジションや走行距離、電池残量などの情報が映される。
さらにミラーの調整を含む各種スイッチはタッチスクリーン内に収められていて、とにかく物理スイッチを少なくしたいという強い意志を感じる。
ヨーロッパでは「危ない」という理由でタッチスクリーン式スイッチの増加に一定の歯止めがかかりそうだという。もしかしたら、ここまで極端なのはEX30が最後になる可能性もあるが、とにかく思い切りがいいのだ。
エンジンを捨ててEVになるなら、このくらい新しくなければ意味がない。多くのEVは従来のエンジン車のユーザーが逃げていかないような作り方をするが、このクルマは全然違う。過去をいっさい背負っていないのである。
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■日本車メーカーにも大いに参考になる!
興奮してクルマの説明をしていなかった。今回試乗したEX30は272ps/35.0kgmのシングルモーター、後輪駆動のグレードでフル充電時の航続距離は560km、価格は559万円(国のCEV補助金45万円)。コンパクトなサイズで扱いやすいのも特徴だ。
走りは当然、凄く快適。乗り心地がよく、静かでパワーもある。しかし、EVに乗るたびに思うことだが、EVは走りの個性が伝わりにくい。いいのは確かなのだが、ほかのEVに比べてどうかといえば、大きくリードしているというほどでもない。
だからEVは走りよりも雰囲気や内外装のデザインなどが他車との差別化となる。その点でボルボ EX30は圧倒的なアドバンテージを持っているのだ。
EVには今、少し逆風が吹いているようだ。新しいモノ好きの人たちはひととおり購入したからか、人気と販売の勢いが弱まっているという。
逆にハイブリッドの便利さが見直され、日本車メーカーに追い風となっている。しかし、長い目で見ればEVの需要は伸びていくはずだから、円安効果もあって大儲けしている今が、EV戦略を組み直す大チャンスなのではないだろうか。
ボルボ EX30は、ボルボではなく新興のEV専業メーカーが作ったようなクルマで、日本車メーカーにも大いに参考になるのではないだろうか。
つまり、少し余裕ができた今、日本の各メーカーはEV専門の別会社を作るべきだと思うのだ。それも上辺だけの別会社ではなく、本社と本気で競うライバル会社にならなければならない。そうすれば新しい息吹が生まれるだろう。
日本のEVはつまらないと言われる。メーカーにも言い分はあるだろうが、つまらないのは事実だし、目を惹くデザインもない。
初代プリウスは「21世紀に間に合いました」といって登場したが、今のEVは21世紀のデザインになっていない。EV新時代を実感できるクルマがないから、ユーザーの意識も変わらないのではないだろうか。
一発風穴が開いたら大きく動く予感もある。ボルボ EX30は素晴らしいEVだったが、これに乗り、「日本車頑張れ!」という気持ちになった。
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■ボルボ EX30をおさらい!!
2023年11月に日本デビュー。全長4235×全幅1835×全高1550mm、ホイールベース2650mmで車重1790kg。69kWhのリチウムイオン電池を搭載し、272ps/35.0kgmのモーターで後輪を駆動する。
航続距離は560kmで、ツインモーターの4WDもある。再生素材を多用したインテリアなど新しさ満載で559万円。オンライン販売のみとなっている。
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