ベストカー本誌で30年も続いている超人気連載「テリー伊藤のお笑い自動車研究所」。過去の記事を不定期で掲載していきます。今回はダイハツ タフト(2020年-)試乗です!(本稿は「ベストカー」2020年10月26日号に掲載した記事の再録版となります)
撮影:西尾タクト
■ハスラーを所有するテリーさん、タフトには乗ってみたかった!
とても気になっていた軽自動車、ダイハツタフトに乗れる機会がついにきた。
私は先代ハスラーを所有していて、主に女房のクルマとして使っているのだが、当然、私自身が運転することもある。
世田谷あたりの細い道では軽自動車はとても便利で、室内は広いし、それでいて遊び心も満載とあって、「いい買い物をした」と満足している。
ハスラーはモデルチェンジして2代目になったが、その真っ向ライバルとして登場したのがタフトだ。スズキとダイハツはいつまでも戦い続けている。おそらく100年後でも決着はついていないだろう(笑)。
さて、タフトである。実車を見た瞬間「このクルマが売れない要素はないな」と思った。「スカイフィールトップ」と呼ばれる大型のガラスルーフも開放感があって素晴らしい。
残念ながらルーフを開けることはできないが、車内が明るくなる。春はもちろんだが、これからの秋~冬の季節も紅葉や雪を楽しめる。
フロントガラス越しではなく、上を見て季節の変わり目を感じるのもいいものだ。これが全グレードに標準装備されているのがタフトのウリのひとつだ。
走らせてみると、NAとターボ車でけっこうな差があるなという印象。NA車でも力不足を感じることはないし、街乗り中心なら充分だが、ターボ車のほうがキビキビ走れて面白い。私ならターボ車を選ぶだろう。
ハスラーと比べてどうかだが、実は、2代目ハスラーは少し「こねくり回しすぎた」のではないかと思っている。「はしゃぎすぎた」と言ってもいい。
初代が大ヒットしたことで外観を大きく変えることができず、そのぶん内装でイメージチェンジを図ったのだろうが、初代にあったシンプルさが失われたのではないか。大ヒット車の2代目は作り方が難しいものだとつくづく思う。
タフトはハスラーの二番煎じだといえばそのとおりだが、スズキとダイハツは互いにマネしてマネされて競争してきた間柄だ。今さらそんなことに目くじらを立てる必要はないだろう。
タフトを見ていると、初代フィアットパンダを思い出す。
もちろん、あそこまでシンプルではないし、内装にオレンジの差し色を入れてにぎやかさも出そうとしているところに2代目ハスラーと同じ匂い(=はしゃぎすぎ)も感じるが、ハスラーよりも外装と内装がマッチしていて、もっと素直に入り込める感覚がある。
どうせなら差し色はオレンジ一色ではなく何色かから選べるようにしてほしかったが、今後バリエーションも増えていくことだろう。
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■軽自動車の楽しさを広げるべし
タフトに乗って思うのは、なぜこの楽しげな雰囲気を軽自動車以外で出せないのか? ということだ。
SUVにしてもミニバンにしても、登録車になった途端に「マジメ一辺倒」になってしまう。軽自動車のような明るいノリの登録車を欲しがる人も多いのではないか。
ダイハツもタフトのような遊び心を登録車に反映するべきだし、難しい仕事ではないと思うのだが、その思い切りがなぜかない。
私がプロデュースしたデリカD:5 eye・キュートでは「ペットのように愛せるクルマ」を目指したわけだが、タフトはまさにそんなクルマに仕上がっている。それなのにロッキーは普通のSUVだ。
カテゴリーを縛る必要もない。セダンだって、いつまでたってもハイヤーのようなクルマを作っているから飽きられる。そうでなければクーペっぽいデザインのスカしたクルマしかない。
なぜもっと可能性を広げようとしないのか。なぜ軽自動車なら自由な発想ができるのに、登録車になると通り一遍なクルマ作りになってしまうのか。日本のメーカーが得意とする軽自動車作りの財産を、もっともっと活かすべきだ。今回、タフトに乗ってそんなことを考えてしまった。
それはさておき、タフト自体はどこも悪いところがないクルマだった。これに文句を言う人は、自分がつまらない人間であると自覚したほうがいい。よく「乗りこなせないクルマ」という言い方をするが、タフトの場合は「遊びこなせない」という表現が正しいのだろう。
タフトのような楽しそうな軽自動車を評して「子どもダマしだ」という言い方をする人がたまにいるが、それはあまりにも夢がない。私は素直に受け取るし、タフトの魅力も全面的に理解する。
でも、今一番気になっている軽自動車は新型N-ONEだったりする。
なんか、ちょっと申し訳ない(笑)。
●テリー伊藤 今回のつぶやき
どこから見ても楽しそうで、買ったら遊びに行きたくなるクルマ。この雰囲気を軽自動車以外でも味わいたい。
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■三菱自動車元会長、益子修氏急逝。同い年の親友、テリー伊藤が思い出を語る
益子さんとは親しくさせてもらいました。キッカケはベストカーです。2005年の東京モーターショーに出た「コンセプトD5」(デリカD:5の前身)が凄くカッコよくて、ベストカーで「テリー賞」として作ったトロフィーを渡したのが初めての出会い。凄く喜んでくれて、その後よく会うようになりました。
「最近連絡がないな」と思っていたら、体調が悪いから会長を退任するという報道が出ました。普通、名誉職のようなかたちで名前だけでも残るものだけど、益子さんは完全にやめると聞いて、そんなに悪いのかと心配していたんです。
その後、奥さんから電話をもらったんですが、益子さんはもう声が出せないと言われました。でも「テリーさんと話したい」といって電話をくれたんです。奥さんを通じて「元気になって、また軽井沢に行きましょうね」と言ったら、話せないはずの益子さんがしわがれた声で「ありがとう」と言ってくれたんです。
益子さんは「こんなに奥さんを愛している人がいるのか」と思うような人でした。また、この夏、私が熱中症になった時も電話をくれたんだけど、自分の体のほうがもっと大変なのに人の心配をしてくれるんです。凄く繊細で気遣いのある人でした。
「惜しい人を亡くした」とか、そんな言葉では言い表せない残念さと悔しさがあります。益子さんと私は同い年の、まさに親友でしたから。
(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)
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