ベストカーが以前から応援している日産自動車大学校。今回はサーキットではなく、東京の離島である八丈島で二回目となる「Dr.Kプロジェクト」。塩害と戦う八丈島のクルマたちを救うために学生が立ち上がった!!
文:ベストカーWeb編集部/写真:塩川雅人
■地域貢献と整備士の経験
この「Dr.K(ドクター・K)」プロジェクトのスタートは八丈島をこよなく愛する自動車評論家の国沢光宏さんが、島内を走る塩害に苦しむクルマを見て、日産自動車大学校と協力して整備のきっかけを作ろうというのが原点。
八丈島は離島ではあるが10社ほどの整備工場が存在するもののディーラーはない。さらに新車の耐久要件を超えるような厳しい塩害もあり、クルマにとっては厳しい存在。
さらに移住者にとっては整備工場の出し先に悩むケースも。そこで八丈町役場を会場に、2級整備士資格を持った日産自動車大学校の学生が無料点検を実施。部品の交換は行わないが、点検結果をシートに記載する。
事前に島内の整備工場にはイベント趣旨を説明しており、点検結果シートの裏面に記載された整備工場の一覧から自宅近くの工場を選択して整備をしてもらうという座ぐみだ。
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■八丈島の「おじゃりやれ」がいい
早速イベントがスタート。担当編集もベストカーのイベントを数多く経験してきたが、だいたい朝イチのオペレーションはまごつく。
慣れない現場でこれは避けようもないことだが、そのなかでどうやってお客さまへの負担を減らすかが手腕の見せ所なのもこれまた真実。
今回はさらに開始時間より少し早く、予約をしていた島民の皆さんが余裕を持って来場してくれた。そこで少しスケジュールを「巻き」でスタートしようと思ったところで、予約システムの不手際で現場は混乱。その後もお客さまを待たせるケースが発生。
それでも島民の皆さんは「いいんだよ、ゆっくりやってね」と優しい声。八丈島の皆さん温かいぜー。「おじゃりやれ(ようこそ、いらっしゃい)」という八丈島の歴史が紡いできた、外部のお客さんを受け入れる習慣がひしひし伝わる。
■トラブルを抱えた車両がどしどし来場
今回も多くのクルマが来場したが、なんと総台数50台以上。スコールもあり、熱帯らしい湿度もあり、なかなか過酷な現場になったがそれでも学生たちはクルマに向き合った。
実は今回のイベントは八丈島では2回目となる。その際の塩害車へのノウハウはしっかりと先生、そして学生へ蓄積されている。
今回は前回の点検が効いているのかそこまでの塩害車はなく、バリエーション豊かな車種がたくさん入庫してきた。
ダットサントラックに、スズキワゴンR-RR(フォグランプがかっこいいのよ)、クラウンマジェスタなど、日産系の学校だがメーカーを問わないイベントだけにバリエーションは豊か。
塩害はすでに学生にとっては「八丈島なら当然のこと」という認識。それでも彼らに整備士としての「引き出し」がまだ足りていないことは、紛れもない事実だ。
■経験はなによりも強い財産になる
なんたって学生は実習場にある日産車しか触れていなければ、インターンこそあれど本格的な実務にあたったこともない。
だからこそ八丈島の車両で学ぶことは多い。この過程こそ整備士としての引き出しを増やすきっかけになるし、トラブルシューティングは実戦に勝るものはないのだ。
今回も走行中に「カタカタ」という異音が気になるという車両が入庫。ダンパーのガタ、エンジンマウントなど多くの点検項目を調べる学生たち。
そしてついに異音の発生源を突き止めた。なんとエアクリーナーの吸気ホースを留めているピンが外れてしまっていたのだ。学生からすればまさかまさかの事例だが、複数オーナーを巡り巡ってきた中古車が多い八丈島ではこのようなトラブルも多い。
イベント全体から見れば「たった5分」の出来事。それでも学生にとってみれば整備士として業務に当たった際の心構えは変わる。
トラブルシューティングのひとつとしてエアクリーナーを点検するだろう。彼が得た知識で作業がスムーズに進むことで顧客満足度も高まる。
なにより他の人の役に立つという経験は整備士としてのモチベーションが上がるものだし、学生のなかには「整備をして初めてありがとうと言われました」という声もあった。
もちろん「やりがい」だけでは生きていけない。今回のイベントには国土交通省の担当者2名が霞ヶ関から視察に訪れ、新たな時代の整備業界を模索していた。
整備士は決してキツイだけの仕事ではない。もっと評価され、正当な対価を得られるように、ベストカーは応援していきます。
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