自動車ローンと言えば、頭金の準備が頭をよぎるが、最近は頭金ゼロで車両購入に踏み切り、ローンを利用するユーザーが多いという。そんな組み方ができるのは、一部の優良な借主だけというわけではない。変わりつつあるローンの常識を紐解いていこう。
文:佐々木 亘/写真:AdobeStock(トップ画像=umaruchan4678@AdobeStock)
■頭金不要でクルマが買える時代
カーリースやクルマのサブスクなども、結構浸透してきた昨今。リースやサブスクでは、頭金という概念がほとんど消えて、頭金ゼロで新車に乗れるのが当たり前になっている。
こうした時代的背景もあり、クルマのローンも変わり目を迎えているのだ。借入金額の1割~2割程度は頭金が必要とされた自動車購入だが、最近はリースやサブスクと同様に、手出しのお金ゼロで新車に乗る人が増えている。
特に頭金ゼロの傾向が顕著なのは残価設定ローン。数年後の車両残存価値(予想)を差し引いた額を、借入期間で均等に割って月々の支払いを行うこの方法では、予想される残存価値分が、かつての頭金のような作用をするので、月々のローン返済額が小さくなるのだ。
そのため、諸経費分も現金で負担せずに、丸ごと全部をローンにするユーザーが増えているという。頭金不要で、今すぐクルマが買える時代がきた。
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■無理に頭金を出すべからず
残価設定ローンを使う場合、無理に頭金を払う必要性は低いと筆者も思っている。昨今の頭金ゼロの流れには、大賛成だ。
ただし、払わなくていいのだが「頭金」は準備してほしい。頭金を準備せずに無鉄砲に年収と同額のクルマを残価設定ローンで買うという暴挙も、理論上は可能なのだが、後で痛い目をみるから絶対にNGだ。
お金を計画的に貯められない人は、ローンを使うことにも危険がはらむ。300万円のクルマを買うなら、最低限自由に使えるお金を30万円ほど用意できないと、残価設定ローンの自転車操業に陥って、最終的にはデフォルト(破綻)する可能性が高くなるだろう。
反対に、しっかりと計画的にお金を貯められるなら、自由に使うことのできる現金を、自動車購入へ無理に充てる必要は無い。そのまま貯蓄を続けて、数年後に発生する車両残価との清算を、クルマ本体ではなく手持ちの現金で行えるくらいまで、貯蓄を増やしてほしいのだ。
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■頭金を入れるということは価値の低くなるものにお金を使うという現実
クルマというものは、そのほとんどが時間の経過とともに価値を落としていく。300万円で買ったクルマが、3年後には半分の価値になり、5年後には3割程度の価値しか残らない。常に減価していくものなのだ。
そのため、車両購入時にローンを組んで頭金を入れるということは、手元に残して置けば額面通りの価値が続くお金の価値を、いたずらに下げることになる。
いじり倒して乗り潰すというなら、減価も何も考えなくていいのだが、乗り換える・下取りに出すなどのクルマを評価するタイミングが来る場合には、車両の減価というものと、上手く付き合っていかねばならない。
リースやサブスクが最近人気を集めるのは、明確に「使った分(価値が減った分)のお金を払う」というシステムが確立されているからだろう。残価設定ローンも、これと同じような感覚で、毎月のローン支払いを行っていく方が効率的だ。
特に、いつ大きなお金が必要になるかわからない子育て世代は、クルマの頭金という大きなお金は使わず、子供の成長のためにストックしておきたい。これは年金支給を受ける高齢者世帯でも同じことが言えるだろう。
せっかく貯めた大きなお金は、いざというときのために残しておく。経済が不安定な今を乗り切るためには、頭金ゼロのローンで上手にクルマと付き合ってほしい。
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