ショートプレミアムという新しい価値観を提供し、レクサスCTやGRカローラの源流とも言える「ブレイド」。中でもモデル中期~後期は、レクサスで使われている名称や技術をいくつも盛り込んでいるので、レクサスで販売していてもおかしくなかった。今回はそんな、小さな高級車を振り返っていこう。

文:佐々木 亘/写真:トヨタ、レクサス ほか

■マスターは名前の通りの超傑作

2006年に登場したトヨタ ブレイド。どこかレクサスの匂いを感じさせるショートプレミアムだ

 2006年に登場したブレイド。翌年にはV6の3.5Lエンジンを搭載したブレイドマスターを新設定する。

 全長4,260mm×全幅1,760mm×全高1,515mmという、それほど大きくないボディに3.5LのV6エンジンを積み込むことが異例中の異例であり、さらに駆動方式はFFというから当時の関係者たちは驚きを隠せなかった。

 サブネームのマスターは、英語のマスターピース(傑作)が由来だ。ゆとりに満ちたクルージングと、「深化(レクサスでも度々使われる表現)」したインテリアとスタイリングが、さらなる上質感を醸し出す。

 ドライビングプレジャーを約束する心臓部に足回り、本革とアルカンターラを使った気品漂うインテリアは、まさに傑作と呼ぶにふさわしい。

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■トヨタプレミアムコンパクトのマスターピース! ブレイドマスターG Version Lとは

Version L専用色となるマルーンマイカを合わせて、赤系のボディカラーが3色展開される珍しい車種でもあった

 レクサスの最上級グレードに付けられる「version L」。このグレード名が、ブレイドにも付けられていた。それが、2008年に登場したブレイドマスターG Version Lだ。Vが大文字か小文字かという違いはあるものの、レクサスに使われている名称を、そのままトヨタ車が使うというのはかなり珍しい。

 Version Lに相応しく、数々の専用装備が与えられた。専用フロントエンブレムの「琥珀」、ダークスモーク加飾のフロントヘッドランプ、専用塗装のアルミホイール、本革のインテリア、マルチアジャスタブルパワーシートという隙のない仕様だ。

 ボディカラーには、Version L専用色となるマルーンマイカ(3N0)を用意。ブレイドには他にもスーパーレッドV(3P0)とジンジャーレッドマイカメタリック(3R6)があり、赤系のボディカラーが3色展開される珍しい車種となっている。

 翌年のマイナーチェンジで、Version Lは名称を廃止したものの、装備内容は3.5MASTER-Gに引き継がれた。そして、このマイナーチェンジではマスターに載る3.5Lエンジンに、レクサスIS-Fでも採用された6-Speed SPDSが組み合わされている。トヨタ車としては、もちろん初の装備だ。

 ブレイドは、名称・装備ともに、レクサスに最も近づいたトヨタ車と言っていいだろう。

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■ブレイドがあったからCT200hやGRカローラが生まれた?

レクサス CT200h。写真は前項でも触れた「version L」

 トヨタにとって、ブレイドというクルマは「高い壁への挑戦」だったと思う。走りや質感は、それまでのトヨタ車とは一味も二味も違った。しかし、比較対象として取り上げられやすかった欧州プレミアムハッチと比べると、走行性能に対するツメの甘さも目立っている。

 そうした意味では、トヨタ的な失敗しないクルマではなく、大いに失敗しようと心に決めて登場してきたクルマとも言えるのではないだろうか。

 その失敗が、のちのレクサスCT200hや、GRカローラというショートプレミアム、ショートワゴンのホットモデルが生まれるための糧になっていると筆者は思う。そして、ブレイドの挑戦は、現在のトヨタの挑戦、GRの挑戦へと続いていると感じるのだ。

 1世代、約6年という短いモデルライフだったが、ブレイドがトヨタやレクサスの「プレミアム」を考える上で、与えた影響は計り知れない。今、100万円以下で買えるブレイドに再び乗り込み、トヨタショートプレミアムの第一歩を感じるのも、悪くないと思う。

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