マイカーに求めるものは何? カッコ良さ、走行性能の高さ、エンジンパワー、質感の高い室内空間、燃費の良さなど枚挙に暇がないが、忘れてならないのは乗り心地に直結するシートの座り心地。読者の皆さん、今、乗っているクルマの座り心地に満足してる?

文/FK、写真/日産、ホンダ、マツダ、三菱

■今、聞いても衝撃!?  初代パジェロのシートには画期的な機能が搭載されていた!

不快な振動を吸収するとともに身体を常にシートにフィットさせることで長時間運転や悪路走破時の優れた乗り心地と疲労軽減を目的に採用された初代パジェロのサスペンションシート

 高価格帯の高級車といわれる類のものであれば贅を尽くした素材を使用したシートだけに留まらず、便利でかつ充実した機能も採用されていて快適なことこの上なし。

 しかし、最近では軽自動車やコンパクトカーといった普段のアシとして使用するクルマにまで座り心地の良さにこだわり抜いたシートが採用されていることをご存じだろうか。

 ここではホンダ、日産、マツダ、トヨタの代表的なシート4種類を紹介するが、その前に! 今から遡ること40年以上前の1982年にも凝りに凝った機能を搭載したシートが採用されていたモデルが存在した。

 そのモデルとは初代パジェロ。

 ホールド性が高いバケットタイプの運転席には、国内初の“サスペンションシート”なる代物が採用されていたのだ。

 このサスペンションシートは車体の振動をダイレクトにドライバーに伝えないようにするためのショックアブソーバーを内蔵したパンタグラフ機構が採用されており、疲労を緩和させるだけでなく快適な乗り心地も実現。

 それだけならまだしも、ドライバーの体重に合わせてスプリングの力が調整できる体重調整ノブであったり、サスペンション機能が不要なときに用を足してくれる3段階のロック装置も装備されていた。

 40年以上前のクルマでもこれだけの創意工夫が盛り込まれていたのだから、イマドキのクルマはもっとスゴいはず……ということで、まずはフィット、ヴェゼル、ステップワゴン、シビック、フリードなどに採用されているホンダのボディースタビライジンシートから紹介していこう。

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■疲れにくくて快適すぎるホンダの「ボディースタビライジングシート」

 2020年2月に発売された4代目フィットに採用したことを皮切りに、これまでに数多くのモデルに投入されてきているボディースタビライジングシート。

 これは座った瞬間に誰でも違いがわかる心地良さ、シンプルかつ上質で飽きのこないデザイン、さらには車内の会話をはずませる開放感を目指すべく、上級セダンへの採用も見据えて開発された新世代のシートのこと。

 背中からお尻にかけしっかりと身体を支えながら、包み込むようなやわらかさを実現するために体圧を面で受け止めて乗員をしっかりとサポートしてくれるのが大きな特徴だ。

 フィットにおいては座面パッドを従来モデルに対して30mm以上厚くするとともに、パッドの硬度を下げてよりソフトな着座感も実現し、優れたホールド性とやわらかな座り心地を高い次元で両立させている。

 また、身体をしっかり保持する新世代シートフレームの採用も大きなトピックで、骨盤から腰椎までを樹脂製マットで支える面支持構造をホンダ車として初めて採用して均一感やしっかり感の高い着座フィーリングを提供。

 さらに、座面にインナーフレームを設けることで臀部を包み込むように保持し、ドライブ中のさまざまなGに対して臀部のズレや姿勢変化が少ないホールド性も実現。長時間のドライブでも疲れにくいだけでなく、安心感が高い仕上がりでユーザーからの評価も高い。

 ユーザーがとるドライビング中の姿勢は千差万別であり、身体も硬い人がいれば柔らかい人もいる。

 加えて、運転中・運転後の疲労度も人によってさまざまだが、このボディースタビライジングシートは不特定多数のドライバーの特徴を最大公約数的に捉え、リカバーする範囲を広げた汎用性が高い快適なシートなのだ。

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■NASAが計測した中立姿勢から着想を得た日産の「ゼログラビティシート」

ヒルスタートアシスト、アドバンスドヒルディセントコントロール、ALL MODE 4×4-i、アクティブライドコントロール、アクティブエンジンブレーキ、コーナリングスタビリティアシストなど、最強のSUVに相応しい先進機能と環境性能を備えた3代目エクストレイル

 2013年12月にフルモデルチェンジを行った3代目エクストレイルに初めて採用されたゼログラビティシート。

 当時はスパイナルサポート機能付きシートとも呼ばれていたゼログラビティシートはNASAから着想を得たシートであり、その名のとおり“無重力空間をヒントに設計したロングドライブでも疲れないシート”のこと。

 NASAが計測した中立姿勢(人間が無重力状態で脱力した姿勢)こそが身体への負担がもっとも少なく、長時間でも姿勢が崩れにくく、疲れにくいということから、この無重力状態で脱力した姿勢をクルマのシートにも適用。

 具体的には腰から背中にかけて連続支持する中折れ(逆くの字)形状によって中立姿勢を再現したものであり、慶應義塾大学、山崎研究室との共同研究によって独自のシートシミュレーターと人体筋骨格モデルを用いて筋肉と背骨の負荷が最小となる着座面形状と各部位の支持力を把握するなど、徹底的な解析も実施されている。

 そんな解析をもとに、ゼログラビティシートではシートバックの初期形状と部分たわみ特性をコントロールすることで最適な支持状態を実現している。

 また、シートの構造を従来モデルから抜本的に変更することで、重量のある胸郭と骨盤を積極的に支えて背骨や筋肉への負荷・負担を軽減するとともに血行も改善。

 その結果、長時間ドライブ時の着座による疲労感が軽減されて快適なロングドライブが可能になったというわけだ。

 そんなゼログラビティシートなだけに採用されている車両も軽自動車をはじめ、ミニバン、SUV、高級セダンに商用車に至るまで多岐にわたる。

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■脊柱がS字カーブを描くように骨盤がしっかり立った状態を維持するマツダのシート

 コンパクトカーの概念を打ち破ることを志すマツダブランドへの入口を担うMAZDA2。

 あらゆるシーンでユーザーが感じる“質感”に徹底してこだわったMAZDA2なだけに、静かで上質な空間に包まれる居心地の良さやいつまでもそこにいたいと感じる心地良さなども特筆すべきポイントだが、そんな快適な居住空間を実現するため、シートにもさまざまな工夫が凝らされている。

 人間が歩行する際(骨盤が立った状態)に無意識でバランスを保持する力を発揮して、頭部がより安定する状態をつくり出すことに着目したマツダ。

 この次世代技術コンセプトともいえる考え方を取り込み、マツダでは理想的な着座姿勢と考える“脊柱がS字カーブを描くように骨盤がしっかり立った状態”を維持できるシートを開発し、2019年5月に発売したMAZDA3に続いて2019年9月に発売したMAZDA2にも導入した。

 MAZDA2のシートで最大の特徴となるのは、カーブやレーンチェンジなどで目線がぶれることなく、クルマとの一体感が高まり、運転のしやすさが実感できること。

 これが実現できたのはシートの内部構造を新たに設計し直し、よりきめ細かいチューニングが各部で行われているから。

 例えば、バネ定数の変更を筆頭に、身体のロールが起きにくくなるようトーションバネの追加、サポート材の追加、高減衰ウレタンの採用などによって骨盤がしっかりと立ち、その状態が維持できる構造を実現。

 これらにより快適なシート性能はもちろん、上質な座り心地も手に入れたのだ。

 また、一部グレードにはお好みのドライビングポジションを記憶させることができる運転席6Wayパワーシート&ドライビングポジションメモリー機能も搭載されており、まさに至れり尽くせり!

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■1年を通して活躍するトヨタの「快適温熱シート&シートベンチレーション」

快適さと心地良さを追求するべく、快適温熱シートをトヨタ車で初めて採用したのは高価格帯の高級車ではなく意外にもヴィッツであった

 快適温熱シートは乗員の快適さと心地良さを追求するべく、新しい機能を備えたシートヒーター=快適温熱シートが発表されたのは2007年8月のこと。

 同年同月にマイナーチェンジが行われた2代目ヴィッツに始まり、高価格帯のモデルを中心に現行モデルにも採用されている快適温熱シートは人間工学の見地からシートヒーターの配置と温度分布を見直したもので、その目的は長時間座っていると負担のかかりやすい肩や腰、寒い日や冷房使用時に冷えやすい下肢にあたる部分にヒーターを配置して効果的に温めるというもの。

 加えて、温度設定の切り替え(Hi-Loモード)も可能なことから冬場のみならず、夏場の冷房使用時などオールシーズンで使用できること、さらには従来のシートヒーターに比べていったん温まった足先が冷めにくい傾向も確認されており、ユーザーから好評を博している。

 また、クラウン、ランドクルーザー、アルファード、ヴェルファイア、bZ4Xといった高価格帯のモデルにおいては快適温熱シートだけでなく、シート内部に装備されたファンで背もたれと座面から空気を吸い込み、不快な蒸れを防止する機能を有したシートベンチレーションとの組み合わせが採用されるケースも多く、より快適な座り心地を追求。

 なかには、車両のエアコン風量と連動してシート内部のファンの吸い込み量を自動でコントロールし、夏場における室内の快適性をよりいっそう向上させるタイプもある。

 このように快適温熱シートやシートベンチレーションといった快適装備をいち早く採用してきたトヨタのクルマづくりは、人への優しさや使いやすさを追求した技術開発に積極的に取り組んできた証でもあるのだ。

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