トヨタはNTTと交通事故ゼロ社会へ向けてモビリティ分野でのAI・通信の取り組みに合意したと発表した。これはいったいどういうことなのか? 全体像をお届けしよう。
文:ベストカーWeb編集部/写真:TOYOTA、編集部
■ヒト・モビリティ・インフラが「三位一体」で絶えず繋がる
トヨタはこれまでも次世代モビリティの進化、そして水素のインフラ整備など単なる自動車製造業という枠組みにとらわれない活動をしている。
そのなかでも特筆すべきこととしてトヨタはSDVの開発を進めている。このSDVは「ソフトウェア・ディファインド・ヴィークル」の略で、ソフトウェアで車両の特性を変えたり、より安全に快適に走れる車両を指す。
SDVについては車載OS「アリーン」の開発などもあり、次の一手に期待がかかっていた。2024年3月決算の場でトヨタ佐藤恒治は以下のように語っていた。
「トヨタらしいSDV」の実現に向けては、この1年は車載OSである「Arene(アリーン)」の開発、ならびに、ソフトウェア基盤の整備に注力してまいりました。これから、生成AIなどの活用により、自動運転も含めて、モビリティの進化を実現していきたいと考えています。今後、AI関連の投資も拡充してまいります。また、SDVの基盤づくりをさらに進めていくために、インフラや、生活に寄り添ったアプリ・サービスなど、自動車産業を越えた「戦略的パートナーシップ」の構築に取り組んでまいります」。
この最後のセンテンスこそ、今回のNTTとの協業につながる部分だろう。モビリティ側の準備は完了していても、やはりドライバーや歩行者のヒト、そして信号や道路などのインフラとの接点がないと役に立たない。
その間を繋ぐのがNTTの役目ということになる。
■車路間、車車間の通信速度を上げてAIでより正確に
繰り返しになるが今回の連携はヒト・モビリティ・インフラがつながること。しかもより早く、より正確につながることを求めている。
簡単に言えば見通しの悪い交差点などで、右直事故のシーンを想像してほしい。直進する大型車の後ろに二輪車がいて、右折車と衝突する事故はよく聞く話。
そんな時も赤信号で止まっている交差する車線の車両からは二輪車が見えており、ここに今回の技術が採用されれば車車間通信を行い右折車両に警告を出す、さらにはADASの性能をワンランク上げるような取り組みが可能になる。
0.1秒を争う場で通信の遅延が発生すればせっかくの技術も事故を防げないし、すべてのシーンで警告を出そうものなら「狼少年」になってしまう。
そこでNTTの技術で通信速度の高速化、そしてAIを活用したシーンの分析を行うという。トヨタはこのような技術提携をブラックボックスにするのではなく、各社と連携して安全な自動車社会の構築に挑む姿勢も表明した。
防げなかった事故を最先端技術で防ぐ。あとはこの手の技術は多くの車両に広まらなければ意味がない。だからこそトヨタはメーカーの垣根を超えてシステムを広げる決意を固めたのだろう。今後の情勢に期待したい。
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