当連載は、カーオーディオ愛好家をさらに増やすことを目標として展開している。システムアップに興味を持っても“わかりづらさ”が壁となる。それを払拭しようと、用語や仕組みについて意味や成り立ちを解説している。現在は、「外部パワーアンプ」に焦点を当てている。
◆「パワーアンプ」は少なからず“ノイズ”も出力する。その率を表すスペックがある。
前回からは、外部パワーアンプのカタログを見たときに目にする「スペック」についての説明を開始した。今回は、その続編をお贈りする。
さて前回は基本的なスペックを取り上げたのだが、今回はよりマニアックなものにスポットを当てていく。まずはこちら、「高調波歪率」から。
これはつまり、「信号を増幅するときにどれだけ歪み成分を出力するか」を表すものだ。単位には「%」が使われる。
ところでオーディオシステムにて再生される音を良くしようとするとき、そのキモとなるのは「音源に収められている情報をいかにそのまま(すべて)再生できるか」だ。優秀なオーディオシステムでも、もともとの情報の質を上げることは基本的には不可能だ。なので、音源に含まれている情報を読み取りそれを音に変えるまでの過程において、情報のロスや悪い方向への変化をどれだけ減らせられるかが追求されることなる。
「外部パワーアンプ」を搭載したオーディオカーの一例(製作ショップ:サウンドウェーブ<茨城県>)。◆開発者は歪みがゼロに近づくことを目指して設計。その結果が高調波歪率で表される!
で、外部パワーアンプにて信号を増幅する際には、どうしても微細に歪み成分が生まれてしまう。なので開発者はそれを限りなくゼロに近づけることを目指して設計するのだが、どれだけゼロに近づけられているのかが、当スペックにて表されるというわけだ。なので当スペックは、数字が小さいほど良い。
ちなみにそのパーセンテージは実際、かなり低い。なので製品ごとの違いは相当に微細だ。とはいえ、システム全体の性能が上がるほどにその少しの違いが最終的な音にある程度の影響を与えることとなる。なので当スペックの数字は小さいほど良いことは確かだが、好みの音がするか否かはまた別の問題だ。ゆえに当スペックを見比べることだけですべてを決めつけるのは早計だ。
次いでは、「S/N(エスエヌ)」について説明しよう。なおこれは「S/N比」と表記されることも多い。
で、当スペックでは「信号(シグナル=S)」と「雑音(ノイズ=N)の比率が表される。
「外部パワーアンプ」を搭載したオーディオカーの一例(製作ショップ:サウンドウェーブ<茨城県>)。◆S/Nではノイズに対する信号の量で、性能の良し悪しを指し示す!
なお先述したとおり、外部パワーアンプで信号を増幅する際には微細ではあるもののノイズを出すのだが、それがどのくらいなのかを示すスペックがもう1つあり、それがこのS/Nというわけだ。で、こちらではノイズに対する信号の割合が示される。単位には「dB(デシベル)」が使われる。なお、分母にノイズが来るので、数字は大きい方が優秀だ。
ただし当スペックも、これを見比べることですべてを決めつけないように注意すべきだ。実際、高級モデルになればなるほど当スペックの数値は大きくなる傾向にあるが、どんな音がするのかはまた別問題となる。
ところで、オーディオ機器の試聴記事などを読んでいると、「S/Nが良い」とか「S/Nが高い」という表現を度々目にするが、それらは数値としての話ではなく聴感上の印象として使われている。
今回は以上だ。次回以降も外部パワーアンプに関する“分かりづらい”事柄についての解説を続行する。お楽しみに。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。