全国の大学で日々活動する自動車部を取材するこの企画。今回は京都大学の自動車部にお邪魔した。今まで当企画で取材させていただいた自動車部の多くが全日本自動車学生連盟の競技に参加しているが、京大は旧帝国大学の運動部が競い合う、「七大戦」を主戦場にしている大学だ!!
※本稿は2024年10月のものです
文:奥野大志/写真:奥野大志 ほか
初出:『ベストカー』2024年11月10日号
■そもそも「自動車部」ってナニ?
自動車部はモータースポーツ活動を行う、いわば大学公認のレーシングチーム。ラグビー部や陸上部などと同じ体育会に属し、運転と整備の技術を大会で競っている。
私立大学の多くは全日本自動車学生連盟の競技に参加しているが、今回取材した京都大学は旧帝国大学の運動部が競い合う、「七大戦」を主戦場にしている。
●京都大学自動車部プロフィール
・正式名称:京都大学体育会自動車部
・部員数:44名(2024年取材時)
・試合車:0台(個人車のみ)
・活動場所:吉田キャンパス内自動車部ガレージ
・活動日:毎週金曜日
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■七大戦をメインに戦う
京大自動車部のガレージはメインキャンパスである吉田キャンパス構内にあります。2024年8月某日の金曜日、指定された住所に向かうと、西部講堂と呼ばれる建物の隣にガレージを発見。屋根付きピットと未舗装の駐車場が専有エリアになっており、多くの部員が集まっています。
インタビューに対応していただいたのは工学部3年生の主将、本田柊太さん。驚くことに、京大自動車部に入りたいから京大を受験したというナイスなキャラクターの持ち主。普段はインテグラタイプRで腕を磨いています。
「毎週金曜日は全員が集まる活動日で、ガレージで部会を行っています。それ以外の活動日は特に設けていませんが、自分のクルマをピットに持ち込んで整備を行う人や、走行会に参加するなど、比較的自由に活動しています」(本田主将)
京大自動車部のメインイベントと呼べる大会が「全国七大学総合体育大会」。通称、七大戦と呼ばれる旧帝国大学(北海道大学、東北大学、東京大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学)運動部による大学対抗戦です。
各運動部が獲得したポイントの合計で大学ごとの順位を決めるルールになっており、2023年、京大自動車部は優勝。事実上の国立大学ナンバーワン決定戦となっており、京大自動車部は2連覇を狙っています。
「七大戦はジムカーナとダートラで毎年9月に行なわれます。大会は個人車で行われるため、部員たちは個々に走行会や地区大会に参加し、腕を磨きますが、それらは七大戦で優勝するため。すべての活動はそこにつながっています」(同)
そんな練習熱心な京大自動車部ですから、競技志向が強いのが特徴。なかでもダートラは部のコアカテゴリーになっており、全日本で活躍するOBもいます。自然とダートラに力が入るようになり、いつしか「ダートラの京大」と呼ばれるようになりました。
「ジムカーナもやってはいるのですが、ダートラを得意とする先輩が学年ごとにいて、後輩がその技術を受け継いでいる感じです」(同)
その最たるものがトヨタガズーレーシングのWRCチャレンジプログラムに合格した山本雄紀さんの存在。山本さんは京大に在学中の自動車部員で、現在はヨーロッパでGRヤリスのラリー2をドライブしています。WRCドライバーになるためのステップを上っており、ダートに強い京大を象徴する存在です。
「山本さんの車載映像や走行映像が部にあるのですが、なかなか凄くて。フィンランドに行く人は違うなという印象です」(同)
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■まさに蜃気楼のごときミラージュの群れ
また、ミラージュの個人車が多いのも京大自動車部の特徴。現在、部全体で10台前後を保有しており、ガレージは“ミラージュ牧場”と呼ばれています。
「自分も以前、ミラージュに乗っていました。決して速くはないですが、運転していて楽しいと思えるクルマです。他大学でもたくさんの人が乗っていて、うまく言い表せないですが、それが魅力かなと思います。クルマが丈夫だから? それはないです。めちゃめちゃ壊れますよ」(同)
今回取材した部員のなかには、ミラージュからミラージュに箱替えした猛者もいて、なんとDIYでのスポット増しも経験済み。ガレージにリフトはなく、正直、設備は整っていませんが、セッティングツールを自作し、さまざまな工夫を凝らして車両を製作しています。
日本屈指の秀才たちが通う京大ですが、至って普通(普通じゃないか)のクルマ好きが集まっていて、とても好感が持てます。
「ガレージはほぼ場所のみというレベルですが、道具がないぶん、自分たちで工夫して整備を行い、ノウハウが身に付いていっているのかなと思います。京大の学生だからできる? いや、それは全然ないです(笑)」(同)
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■連覇がかかった七大戦の結果は!?
取材から約1カ月後の9月7日と10日の両日、七大戦が行われました。結果から先にお伝えすると、2連覇は達成できず。京大自動車部は2位でした。本田主将は、練習機会の少ないジムカーナで上位に入ることができなかったのが敗因と振り返りつつも、京大らしい戦いができたと語ってくれました。
「結果は2位でしたが、ジムカーナの出走直前までみんなで協力してクルマを修理し、最後まで走り切ることができました。記録よりも記憶に残る七大戦だったと思います」(本田主将)
こうして、京大自動車部の今シーズンが閉幕。秋を迎える頃には幹部の代替わりが行われ、本田主将に代わる新主将が誕生しているはずです。先輩たちが築いてきた京大スピリットは確実に後輩たちに受け継がれ、育まれていくでしょう。
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■自動車部員の愛車聞き込み大調査
●ホンダ インテグラ タイプR 岸 汀和帆さん(理学部4年)
もともと初代ヴィッツに乗ってダートラをやっていたのですが、ヴィッツだと規定的に苦しく、現代の小型車よりもちょっと古めのパワーがあるクルマにも興味があり、ミラージュとインテグラ タイプRの二択に。部品的に若干有利なホンダを選びました。インテグラは直線が速く、その点は気に入っています。
●三菱 ミラージュ 浅野翔己さん(文学部4年)
ダートラをやりたくて、先輩が売りに出していたミラージュを買いました。1年生の10月くらいから乗り始め、丸3年くらい乗っています。一度ハコ替えしていて、半年かけてサビ取りやフルスポット増しを行いました。ミラージュのいいところは砂利道や雪道など、悪路に強いところです。
●スズキ アルトワークス 峠 陽樹さん(工学部4年)
以前はヴィッツでダートを走っていたのですが、ちょうどクルマがなくなったタイミングで、OBの方がアルトワークスを貸してくれることになり、今はそれをお借りして乗っています。ヴィッツはFFでしたが、これは4WDなので、後ろを滑らせて走れるようになりました。新しい経験になってよかったです。
●トヨタ ヴィッツ 服部紡久さん(工学部3年)
ダートラとラリーがしたくて、パーツが安いヴィッツを選びました。実は前に乗っていたのもヴィッツで、これは先輩のおさがり。外装をぶつけても直せばいいと思っているので思う存分突っ込めますが、ホイールベースが短い分、まわりやすいかもしれません。ロールバーなどの安全装備以外はフルノーマルです。
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