日本は海の近くまで山が迫る地形のため、非常に橋が多い(トンネルも)。そして橋の維持管理に不可欠な特装車が橋梁点検車だ。国内外メーカーの特殊車両を扱う阪東自動車工業(東大阪市)が11月に開始した展示会には、日本にたった1台しかないドイツ製橋梁点検車が登場。会場でひときわ注目を集めた同車両の特徴に迫る!!

文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部

NEXCO東日本とのコラボーレーションで開発された日本専用機

MBL-1750N

 今回紹介するのはドイツのMOOG(モグ)車のバケット式橋梁点検車「MBL-1750N」だ。

 橋梁点検車は橋の下面や側面、橋梁部分などを点検するためのクルマで、高所作業車の仲間。コの字型に曲がる特殊なブームの先端にバケットを備え、ここに作業員が乗り込んで点検作業を行なう。

 モグ社では広い作業スペースを持つプラットホーム式とブーム先端にバケットを備えるバケット式の大きく2種類をラインナップするが、MBL-1750Nはバケット式橋梁点検車のフラッグシップモデルとなる。

 モデル名の「N」はNEXCOのNで、NEXCO東日本とのコラボーレーションで開発されたモデルであることを示している。具体的には、NEXCO東日本の要望を受けて、阪東自動車工業の仲介のもとモグ社が製造したもので、車両の導入および運用は城西運輸機工(金沢市)が行なっている。

 すでに国内で数台が稼働している既存モデル「MBL-1750T」との違いは「ブームの長さ」で、高速道路の分厚い橋桁や、高い橋脚の点検作業に対応させたいというNEXCO東日本の要望により、「T」よりも第1ブームを長く設計している。

 その作業半径は既存モデルを凌ぎ、バスケットを水平に伸ばせる長さ=最大差込長が17.5m、バスケットを上に伸ばせる長さ=最大高長が21.6m、バスケットを下に伸ばせる長さ=最大深長が22.3mなどは国内最大。また、最大で5.2mまでの歩道を超えての作業も可能となっている。

 なお、長尺ブーム搭載に伴って架装重量が増加したため、車両総重量は32トンに……。保安基準の上限である25トンを超えるため、通行には道路管理者の許可が必要となるが、軸重を10トン以下に抑えたことで、許可は比較的取りやすくなっているそうだ。

アウトリガを張らない独自の機構で交通渋滞を緩和

MBL-1750N

 ベース車両は専用設計のスカニアP450 8×4総輪エアサスシャシーで、後前軸上部に鉄製ローラー、ホイールベース間に「スタビライザ」と呼ばれる補助輪を搭載。

 作業時(ブーム展開時)は、エアサスを下げて鉄製ローラーでタイヤを地面に押さえ付けると同時に、スタビライザを接地させて車体の傾きを抑制し、車両の安定性を確保する。

 国産の橋梁点検車は車両の安定性を確保するため、作業時にアウトリガを張る必要があるが、モグ社の橋梁点検車はこの仕組みによりアウトリガが不要なので、路肩に車両を限界まで寄せて作業でき、車線規制が少なく済み、作業時の交通渋滞の緩和などが期待できる。

 荷台部分に搭載する上モノは、メイン旋回台、第1ブーム、サブ旋回台、第2ブーム、第3ブーム、バスケットなどで構成。ブームは、定番のコの字型をはじめ、上方向や下方向にも伸ばすことが可能で、伸ばした状態での旋回や、前進/後進しながらの旋回も可能だ。

 作業中の前進/後進は油圧駆動式(動力源はシャシーのPTO)の鉄製ローラーでタイヤを回転させて行ない、操作はキャブ内またはバスケット内の操作レバーで行なうことが可能。ブームの操作はバスケットからのみ行なうことができる。

 バスケットは2.5mの上昇機構が備わり、中央分離帯の裏側など奥まった箇所も作業可能。こうしたかゆいところに手が届くのも、モグ社の橋梁点検車の人気の秘密という。

 なお、同車両は現在、日本に1台しか存在しないが、阪東自動車工業では複数のバックオーダーを抱えており、順次納車を予定しているという。今後のさらなる活躍に注目だ。

■MBL-1750Nの主なスペック
●輸送時
車両総重量:32トン(車両重量緩和車両)
車両全長:11.9m
車両全幅:2.5m
車両全高:3.79m

●作業時(左側展開時)
最大差込長(バスケットを水平に伸ばせる長さ):17.5m
最大深長(バスケットを下に伸ばせる長さ):22.3m
最大高長(バスケットを上に伸ばせる長さ):21.6m
最大歩道超幅(対応する歩道の幅):5.2m
最大防音壁超高(対応する防音壁の高さ):4.7m
バスケット許容最大荷重280kg(差込長15m以上は200kg)
旋回角度:T1旋回台220度/T2旋回台180度
使用可能最大風速:12.5m/s
使用可能最大縦横断勾配:6%(3.4度)

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