各地で森が開発され、生息が脅かされているヤマネ=去石信一撮影

 ネズミに似た哺乳類で、森林に生息するニホンヤマネに関する調査と保全、環境教育を進めようと、一般社団法人「ヤマネ・いきもの研究所」(山梨県北杜市)は、費用工面のためのクラウドファンディング(CF)で協力を求めている。得た資金で主に、ふんを採取し、餌にしている花や果実、昆虫の中から地域によって何を食べているかを分析。それぞれの生息地にどんな環境が必要かを突き止め、植樹などを通して保全する。【去石信一】

 ヤマネは樹上で暮らし、小さく夜行性。人の目に触れにくいため、一般の関心は低い。国の天然記念物だが、気付かれないまま各地で森林が開発されており、生息が脅かされている。研究所はこの改善に取り組んできた。

 今回の調査地は、八ケ岳と南アルプス、和歌山県内、島根県の隠岐の島を予定している。湊秋作代表(71)は「ふんは長さ6ミリ。この小さい物からデータを得てヤマネを守ることは、森を守ることになり、木々から酸素や癒やしを与えられる人も守る。豊かな地球の未来を作ることにもつながる」と話す。

 CFは13日に始めた。300万円を目標に6月30日まで支援を求める。コースは3000円~50万円の14コース。金額に応じ、ヤマネの画像データやポストカード、クリアファイル、マグカップを贈り、10万円以上は八ケ岳での調査研究に参加する権利も贈呈する。500万円以上集まれば、東京都内と大阪府内でサイエンスカフェを開催したいという。

 詳しくは同研究所のウェブサイト(https://www.yamane-ikimono.org/)。

「アニマルパスウェイ」を各地に

 ヤマネ・いきもの研究所代表の湊秋作さんは8日、2024年度「『みどりの日』自然環境功労者環境大臣表彰」を受賞した。トンネル工事が計画された紀伊半島で、現地のモモジロコウモリが繁殖する洞窟や、コキクガシラコウモリが冬眠する洞窟が失われないよう、和歌山県や企業と協力して工法を工夫し、守ったことなどが評価された。ヤマネ保護も含めて「保全活動部門」で賞を受けた。

 湊さんは、森を分断する道路を野生動物が安全に渡れるよう、道路上に渡す歩道橋「アニマルパスウェイ」の設置にも各地で取り組んでいる。環境省は3月に発表した「ネイチャーポジティブ(自然再興)経済移行戦略」で、湊さんが会長を務める「アニマルパスウェイと野生生物の会」や清水建設が進めるパスウェイ設置を、参考事例として紹介した。人と野生動物が共存する手法として注目されている。

 同戦略は、道路建設のような経済行為や社会活動が生物多様性に与えるダメージを止め、回復の軌道に乗せることを目指す。同じ3月に閣議決定した「生物多様性国家戦略2023―2030」で位置づけられた。

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