フルーツフライを使った飼料で育てた大型ニジマスの試食会の様子=東京都港区で2024年3月22日、町野幸撮影
写真一覧

 魚のエサの原料である魚粉の高騰が、水産養殖業の大きな課題となる中、たんぱく質が豊富で、環境負荷も低い昆虫が代替原料として脚光を浴びている。活用が始まりつつあるのが、「フルーツフライ」と呼ばれる新鮮な果実を好物とするハエの幼虫だ。

 フルーツフライは、東南アジアを中心に農作物に大きな被害をもたらす害虫として知られ、日本語では「ミバエ」と呼ばれる。水産商社ニチモウと飼料メーカーの日本農産工業、住友化学、化学品専門商社の昭和興産の4社が共同でフルーツフライを使った新たな飼料を開発した。

試食会で提供された大型ニジマス。「A」がフルーツフライ飼料で育てたもの=東京都港区で2024年3月22日、町野幸撮影
写真一覧

 タイにある工場で徹底した密閉態勢のもと飼育した幼虫を油脂と分離し、乾燥させた、たんぱく質の粉を使う。昭和興産によると、2026年の国内販売開始を目指している。

 東京都内で3月、この飼料で育てられた大型ニジマスなどの試食会が関係者を集めて行われた。通常の魚粉飼料で育った魚との食べ比べでは、参加者から「臭いも一切なく、見た目も味も変わらずおいしい」「むしろ甘みが増している」といった声が上がった。

 開発の背景にあるのは、養殖で使う飼料の高騰だ。ペルー産のカタクチイワシなどから作る魚粉を主原料としているが、近年、漁獲高の減少や円安を背景に高騰しており、水産養殖業の経営を圧迫している。

 このため、魚粉に代わる有力なたんぱく源として、昆虫飼料の開発が進められてきた。昆虫は少ない餌で育ち、成長サイクルもはやい。生産で排出される温室効果ガスも少ないため、環境面でのメリットも大きい。新規参入が相次いでおり、愛媛大学や丸紅はそれぞれ別の企業と協力し、ミルワーム(ゴミムシダマシの幼虫)を使った飼料を開発している。

フルーツフライの幼虫を油脂と分離して乾燥させ、作った粉末=昭和興産提供
写真一覧

 フルーツフライ粉末のたんぱく質の含有率は、カタクチイワシ魚粉と同等で、投与試験では魚の食いつきもよく、成長にも差はなかったことが確認されたという。現時点では魚粉に比べ4~5倍の高コストだが、4社は今後、量産体制を確立して魚粉の代替にすることを目指す。

 また、たんぱく質の分離過程で副次的に生まれたオイルには、マカダミアナッツなどに含まれる希少なパルミトレイン酸が多く含まれており、化粧品などへの活用も期待されるという。【町野幸】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。