高価な化粧品やサプリでは凸凹は消えないが、減量や筋トレをすれば目立たなくなる STARAS/SHUTTERSTOCK

<「女の敵」と見なされる皮膚の凹凸。美容業界は対策製品で大儲けしているが効果を示す科学的証拠はない。だが「目立たなくする」ための方法は案外身近なところに──>

お尻や太ももの皮膚などに生じる凸凹──いわゆるセルライトは、約9割の女性に見られるごくノーマルな皮膚の状態だ。にもかかわらず私たちの文化では、忌むべき「女性の敵」と見なされている。

昨年話題になった映画『バービー』では、主人公のバービーが太もものセルライトに気付いてパニックになる。口臭や扁平足もさることながら、こんな醜い凸凹ができたら女として終わりだ、と。


現実世界でも鏡を見てセルライトに気付いたら、多くの女性はギョッとするだろう。無理もない。モデルや女優、インフルエンサーのフォトショップで加工された「すべすべの素肌」を嫌というほど見せつけられているのだから。

セルライトは通常、皮下脂肪が多い部位にできる。たまった脂肪が結合組織を通して皮膚を押し上げ、盛り上がりを作るのだ。この状態は異常でも何でもなく、大抵は痛みもなく、無害だ。

皮膚は人体にある最大の臓器で、3つの層から成る。一番外側の層が「表皮」で、異物の侵入から体を守る最前線の防衛ラインだ。ここでは絶えず新しい細胞が生まれ、古い細胞が剝がれ落ちている。

表皮の下には「真皮」と呼ばれる堅牢な層がある。真皮には線維芽細胞があり、この細胞がコラーゲンやエラスチンなど重要なタンパク質を生産している。これらのタンパク質がみずみずしさや弾力性を生むおかげで、肌は強くしなやかな状態に保たれるのだ。

ファッション誌の影響で

一番下の層は「皮下組織」と呼ばれ、脂肪組織が豊富に含まれる。脂肪組織は非常時に備えてエネルギー源となる脂肪を蓄えるほか、寒さや衝撃など外界の影響から体を守るクッションの役目も果たす。

この三層の下に筋肉がある。筋肉から表皮まで結合組織の束が走り、その袋状の隙間に脂肪組織がたまっている。これがセルライトのもとだ。

セルライトは見た目が悪いとして目の敵にされる。その背景には、女性たちに完璧な美しさを求めさせる社会的な圧力が働いているようだ。多くの女性は滑らかな肌を手に入れるためなら、お金も時間も労力も惜しまない。

おかげで美容業界は、セルライト対策で大儲けできる。特に夏が近づくと、各社競ってクリームや美容液、錠剤やマッサージ器など、ありとあらゆる製品を売り込む。

こうした広告を見て、多くの女性が抱く疑問は「本当に効果があるの?」だろうが、解剖学者である私は、それ以前の疑問を抱く。健康に全く影響を与えないのに、なぜ治療や処置が必要とされるのか。そもそもセルライトはやっつけるべき敵なのか。

セルライトが除去すべき悪玉になったのは、ファッション誌ヴォーグが英語のメディアとして初めてこの言葉を使ってから。以来、女性たちは皮膚の凸凹を異常に気にするようになった。

セルライトを悪玉に仕立てることで、業界は多様な製品やサービスを売り込める。セレブと契約して「効き目あり」のお墨付きを得れば、効果が疑わしい製品でも飛ぶように売れる。

セルライトに関する論文が初めて学術誌に掲載されたのは1978年だが、そのタイトルはまさに「いわゆるセルライト/捏造された疾患」だった。

リアリティー番組で一躍有名になったコートニー・カーダシアンは、夫と共同で設立したサプリメントブランドから最近、「28日間で目に見えてセルライトが消える」と称するカプセル剤を発売した。

食生活や筋トレで改善

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このカプセル剤の成分はメロンの抗酸化物質、ヒアルロン酸、クロム、ビタミンCなど。これらの成分がうまく体に吸収され、セルライトに作用するかどうかは専門家の見解が分かれるところだ。

消化されたヒアルロン酸が真皮に入り込んでコラーゲンの生産を促すことや、ビタミンCが表皮を厚くすることを示唆した論文はある。だが、こうした成分のセルライト除去効果を検証する標準的な手法は確立されておらず、統計的に有意な効果を示すエビデンス(科学的証拠)はない。

ほかにもカフェイン、レチノール、ハーブの抽出物などを含む塗り薬やローションがセルライト除去に効果ありとして売り出されている。だが化粧品は表皮の下まで浸透しないため、たまった脂肪や結合組織には十分に作用しない。

レーザー治療、針を使うサブシジョン、超音波療法など、一部の侵襲的な治療はそれよりましかもしれない。結合組織の束をほぐし、真皮でのコラーゲンの生産を促して、皮膚の弾力性を改善させると考えられるからだ。ただし治療費が高く、何度か処置を行う必要があり、リスクも伴う。

ヘルシーな食生活を心がけ、水分を十分に取り、適度な運動を続けていれば、肌の状態が良くなり、セルライトもあまり目立たなくなるはずだ。また、減量して脚とお尻、おなかの筋肉を鍛えれば、セルライトは気になるほどではなくなる。ただし、完全に消えるわけではない。

肝心なのは、セルライトが治療が必要な病変ではないこと。見た目が気になっても、残念ながらきれいに消せる方法はない。あると騒ぐのはそれで稼ぎたい人たちだけだ。

では、夏に向けてどうすればいいかって? 賢いあなたは宣伝に惑わされず、お金と時間を無駄にしないことだ。

Rebecca Shepherd, Senior Lecturer in Human Anatomy, School of Anatomy, University of Bristol

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.


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