特集は働くママの決断と奮闘です。甘酒の移動販売を始め、長野県辰野町に念願の店を構えた女性が、この程、店を閉じ、長野県伊那市に拠点を移しました。まだ小さい息子の育児と店の営業を両立させるための「再出発」です。
■カラフルな甘酒ドリンクを販売
カップに注ぎ込まれる白い飲み物。豆乳で割った「甘酒」です。
フルーツや抹茶などのシロップが入っていてかき混ぜると、カラフルな甘酒ドリンクに。
客:
「おいしい」
販売しているのは、「甘酒屋 an's」。
主は山岸杏奈さん(32)です。甘酒の販売を始めて8年。当初は独身でしたが、結婚して一児の母に。
店と育児の両立。それは生易しいものではありませんでした。
甘酒屋アンズ・山岸杏奈さん:
「自分にとってはお店は宝物なので、細く長くずっとおばあちゃんになるまで続けたいなと思っている」
自身の決断と家族の支えで壁を乗り越え、この日、店を再出発させました。
■8年前甘酒の移動販売店を始める
辰野町出身の杏奈さん。
名古屋市の調理師専門学校を出て地元に戻りました。
チャレンジしたいことがあったのです。
甘酒屋アンズ・山岸杏奈さん:
「元々、甘酒苦手だったんですけど(知り合いに)とにかくいいから、食べてみてと言われた甘酒が衝撃的においしくて」
それは「甘酒の移動販売」。スーパーなどで3年働いて資金を貯め、2016年にスタートさせました。
甘酒は辰野町産の米と地元の酒蔵・小野酒造店の麹で作っています。飲みやすい「豆乳割り」にして販売すると、これが大好評。
子ども連れの母親:
「飲みやすくておいしい。いろんなバリエーションがあって」
子どもも夢中!
子ども連れの母親:
「お母さんの分も残しておいてね。でもこの飲みっぷりが証明してますね」
■5年前、念願の店を開く
2019年には地元の空き店舗を改装し、念願の店を開きました。
その後のコロナ禍ではイベントでの販売ができない期間もあり、苦労しましたが、良いこともありました。
山岸杏奈さん:
「店舗をつくったから旦那さんと出会えたのもあります。ここに来てくれたから、私の人生がつながっていったという」
■結婚して一児の母に
客として出会った賢治さんと2021年に結婚。妊娠してからも出産間際まで仕事を続け、2023年9月、樹季ちゃんを出産しました。
山岸杏奈さん:
「うれしかったですね、感動しました。でも、めちゃくちゃ大変だなって思ったし、お母さんたちは本当にすごいなと、心から思うようになりました」
山岸杏奈さん:
「疲れていても、ほほ笑まれると最高に幸せです」
しばらくは辰野町のアパートで3人で暮らしていましたが、育児が大変になり、2024年3月から、伊那市の夫の実家で暮らしています。働いている間は主に夫の母・美春さん(60)が樹季ちゃんの面倒を見てくれています。
山岸杏奈さん:
「本当に(家族が)いないと無理。(育児は)仕事の数百倍大変だなと思って、もっとみんな、たたえてほしいし、お母さんたちのことほめてほしい」
夫の母・山岸美春さん(60):
「手伝えるところは手伝って一緒に頑張ろうと、家族で頑張ろうと。(樹季ちゃんが)これからもっと動くようになったら、追いかけられるかどうか大変(笑)」
■仕事と育児の両立で苦渋の決断
産後1カ月で店を再開させた杏奈さん。仕事と育児、がむしゃらに走り続けてきましたが、この春、苦渋の決断をしました。
甘酒屋アンズ・山岸杏奈さん:
「毎日の通勤がすごく大変で、どんどん痩せてきて、ずっとこれをやっていたら自分の体の方が先にダメになって甘酒屋ができなくなったら意味ないなと。(涙)本当に宝物だからずっとここが良いけど。大切な場所を手放して、新しいことに挑戦するというのを頑張ってみたくなりました」
杏奈さんは辰野の店を閉め伊那に拠点を移すことにしたのです。
■地元で最後の営業日
甘酒屋アンズ・山岸杏奈さん:
「お待たせしました、生イチゴ2つです」
6月の「ほたる祭り」の最終日が最後の営業に。
甘酒屋アンズ・山岸杏奈さん:
「ここがあったから、私の人生が大きく動いたなという感覚もあるし、泣いちゃいそう」
最後の営業と聞いてー
松本市から:
「キッチンカーで移動販売しているのでたまに調べて、会いに行って。(これからも)笑顔が出るような甘酒をどんどん作ってくれたらいいなと思います」
辰野町内から:
「豆乳は好きだけど、甘酒は好きではなくて、でも、あんさんのおかげで好きになりました。育児お互いに一人目で、大変なのすごく分かるんですけど、さらにお仕事もされているというのを聞いて、本当に尊敬でしかない」
最終日は常連客が次々と訪れました。
■夫の地元に移転した初日はー
7月7日
伊那市に構えた新拠点。靴磨き職人の夫・賢治さんが仲間と営む店のキッチンを借り、隣に移動販売車を置いて販売することになりました。
初日は樹季ちゃんも駆けつけました。
夫・山岸賢治さん(28):
「(杏奈さんは)本当に信じられないぐらい頑張っているというか夜中まで仕事をしつつ、子どもを見つつで頑張ってくれているなと。それぞれの仕事がありますけど、家族という単位でもいい形を作れたらいいなと」
甘酒屋アンズ・山岸杏奈さん:
「抹茶です、濃い目になっているのでよく混ぜてお召し上がりください」
この日はイベントということもあって、多くの客が訪れ幸先の良いスタートとなりました。
■「個人事業主ママ」次の目標は?
娘(隣の駒ヶ根市から):
「甘酒も豆乳も飲めなかったんですけど、これ飲んでおいしくて飲めるようになりました」
母親(隣の駒ヶ根市から):
「駒ヶ根なので近くて助かりました、いつも辰野の方まで行かなきゃいけなかったからいいよね」
市内から:
「私は今、(仕事を)完全に休んでいる状態なので、ちょっとすごいですよね。個人事業主ママの先駆者だと思うので、健康に気を付けて頑張ってほしいと思う」
涙の移転から1カ月。杏奈さんは既に次の目標に向かっています。
甘酒屋アンズ・山岸杏奈さん:
「赤ちゃんを産んだことがきっかけなんですけど、子連れのママさんとかも来やすいような、駐車場が店の前にあるような店を建てたいというのが今の目標。うちに来て甘酒を飲んだら元気になるよという人がたくさん増えたらいいなと思います」
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