福岡市動物園に30日、アジアゾウ4頭がミャンマーからやってきました。4頭を一度に国外から受け入れるのは、札幌市円山動物園が2018年11月にやはりミャンマーから受け入れて以来となります。動物園の人気者のゾウですが、そもそもどんな動物なのでしょうか。
――ゾウにはいろんな種類があるって聞いたよ。
◆アフリカに生息するアフリカゾウ属と、南アジアや東南アジアに生息するアジアゾウ属がいます。アフリカゾウ属はアフリカのサバンナにすむサバンナゾウとアフリカ大陸西部の熱帯林にすむマルミミゾウの2種に分けられます。アジアゾウ属は1種のみですが、生息地によって、インドやネパールなどにいるインドゾウ▽インド洋に浮かぶセイロン島(スリランカ)にいるセイロンゾウ▽インドネシアのスマトラ島やカリマンタン(ボルネオ島)にいるスマトラゾウ――の3亜種がいます。マレー半島や中国・雲南省の熱帯などにも生息しています。サバンナゾウが一番体が大きく全長6~7・5メートル、体高3~4メートル、体重は5~7トンで陸上最大の哺乳動物です。アジアゾウは一回り小さく、マルミミゾウはさらに小さいです。
――ゾウといえば、長い鼻と大きな耳が特徴だね。
◆ゾウの鼻は、ヒトでいう鼻と上唇が一体化した器官です。体が大きくなり水を飲んだり草を食べたりする時に、体をかがめるのが負担になることから、進化して長くなったと考えられています。骨はなく筋肉でできており、自由自在に動かせます。大きな耳は、体温の調節で重要な役割を果たしています。ゾウは汗腺がなく汗をかきませんので、ヒトのように汗をかいて体温を下げることはできません。その代わり、たくさんの血管が通っている耳をバタバタ振ることで血液の温度を下げ、体温調節をしています。
――何を食べたらあんなに大きくなるんだろう。
◆ゾウは草食動物で、草や根、木の葉、種子、果物まで幅広く食べます。食べる量も多く、アフリカゾウだと、生息環境や個体のサイズにもよりますが、野生の成獣は1日に100~200キロも食べるといわれます。野生のゾウは1日の大半を食べる、もしくは、食べるための移動に費やします。
――普段はどうやって生活しているの?
◆雌は10~20頭くらいで群れを作って生活します。血縁のある雌ゾウとその子ゾウから成り、雌は基本的に生まれた群れに一生とどまり、最年長の雌が群れを率います。一方、雄は成長すると群れを離れ、繁殖期になると雌の群れと合流し交尾をします。その後、雄ゾウは群れにとどまることなく再び単独で生活します。
――人とゾウとの関係はどうだったの?
◆ゾウはヒンズー教では神様、仏教では神聖な動物として扱われます。古くから人間にとって特別な生き物だったのです。知能が高く、大きな体で力も強いため、田畑を耕したり材木などの重い物を運んだりする使役動物として重宝されてきました。一方で、戦争では戦車のように相手に突進したりする武器として使われるなど、悲しい歴史もありました。
――世界にはどのくらいのゾウがいるの?
◆国際自然保護連合(IUCN)によると、個体数はアフリカゾウは約41万頭、アジアゾウは5万頭近くといわれています。IUCNのレッドリストでは、サバンナゾウとアジアゾウが「EN(危機)」、マルミミゾウは「CR(深刻な危機)」に分類されています。高値で取引される象牙目当ての密猟が相次いだことや、開発が進んでゾウがすめる環境が減ったことから個体数は減っています。
――日本に連れてくることは難しいの?
◆難しいです。1970~80年代ごろには10頭程度を一度に輸入するサファリパークがあったようですが、希少動植物の取引を制限する「ワシントン条約」が75年に発効し、同年にアジアゾウ、90年にアフリカゾウが、商業目的の国際取引が禁止される「付属書1」に掲載されました。ただ、ワシントン条約は野生動物が対象で、東南アジアなどのゾウキャンプで飼い慣らされた個体を繁殖や研究目的で国内に連れてくる事例は近年でもあります。福岡市動物園もこのパターンですが、動物の処遇を改善しようという「動物福祉」の考えが浸透し、ゾウに負担をかけられないことから簡単に輸入できないのが現状です。ゾウにとって快適な広さや設備を備えていることも求められるため、多額の費用も必要となります。
――日本の動物園にはどのくらいのゾウがいるの?
◆日本動物園水族館協会(JAZA)によると、JAZA加盟の動物園には23年末現在で、アフリカゾウが22頭、アジアゾウが82頭飼育されていますが、高齢化が進んでおり、将来ゾウがいる動物園が減少することが指摘されています。
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