医師と看護師の間に立つ新たな存在、診療看護師が医療現場に変革をもたらしている。長崎大学病院の心臓血管外科で働く村上友悟さんの一日を通じて、診療看護師の役割と可能性を探る。
医師の仕事を担う看護師
朝の病棟で入院患者の回診をしているのは、医師ではなく診療看護師の村上友悟さんだ。
この記事の画像(8枚)一週間前に心臓弁の手術を受けた患者を診察し、心臓の動きを助ける器具のワイヤーを抜くなど、術後の処置を行っている。
「ドクター以外でやるのは自分だけ」と村上さんは語る。医師の指示を受け、科としてのルールのもとで処置を行っているという。診療看護師、通称ナースプラクティショナー(NP)は、医師の指示や決められたルールのもとで、通常の看護師よりも広い範囲の医療行為を行うことができる。
村上さんは朝のカンファレンスで医師や看護師と情報を共有し、その日の業務に臨む。「どうしても判断を求められる、看護師からこれってどうですか?って聞かれる」と村上さん。医師と看護師の間に立ち、両者をつなぐ重要な役割を果たしているのだ。
医療現場の働き方改革
診療看護師の導入は、医療現場の働き方に大きな変化をもたらしている。
長崎大学病院心臓血管外科の三浦崇主任教授は「手術に入ってしまうと昼間の病棟でしなければいけない仕事ができない」と語る。その時間帯の仕事を診療看護師がカバーすることで、医師の負担が大幅に軽減されているのだ。
実際、心臓血管外科の医師1人当たりの年間超過勤務時間は、村上さんが加わる前は約800時間だったが、2年後には560時間にまで減少した。
看護師の超過勤務時間も半分以下に減り、患者への対応時間も短縮された。
13年目のベテラン看護師は、「話しかけやすい」「患者さんに何かあった時は医者はオペ(手術)に入っていたりするのですぐにかけつけてもらって相談しやすい」と診療看護師の存在を評価する。
診療看護師の未来
診療看護師になるためのハードルは決して低くない。
看護師としての5年以上の実務経験、大学院修士課程の修了、さらに民間の認定試験合格が必要だ。2024年4月時点で全国に872人いるが、これは看護師全体のわずか0.07%に過ぎない。
村上さんは「ドクターの数が増えるのも一つだと思うが、診療看護師で代用ができてドクターは手術に専念できる環境が一番いいんじゃないかと考えている」と語る。
医療過疎地での在宅医療や都市部での医師不足を補う役割として期待される診療看護師。必要な時に短い待ち時間で医療を提供できる仕組み作りは、患者にとっても医療従事者にとっても大切なことだ。現段階では国家資格ではないが、日本看護協会や日本看護連盟などは自民党に要望書を提出している。
医師と看護師の間に立つ「診療看護師」の存在が、日本の医療をどう変えていくのか。その可能性と課題に、今後も注目が集まりそうだ。
(テレビ長崎)
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