熱血漢の教師役を演じ、人気にまた火がついた=昭和63年


《「紅白歌合戦」再出場打診のきっかけとなったヒット曲、「抱きしめてTONIGHT」を主題歌とするドラマ「教師びんびん物語Ⅰ」(昭和63年)と「同物語Ⅱ」(平成元年)への出演は、人気に陰りが出ていた田原さんの復活を強く印象付けた》


出演の話が来たとき、(主演の)教師・徳川龍之介の役はできなくはない、と思いましたね。子供たちに算数や歴史を教えるわけではない。コミュニケーションを大事にすればいいのだ、と。プロデューサーは、亡くなった僕の父が教師だったことは知らなかったと思います。

(撮影現場で)僕は座長だったから、「現場は明るく、楽しく」という気持ちでしたね。僕自身が子供であり、ふざけてましたから。僕は子供が大好きなので、子供たちとワチャワチャしていると、自然といい雰囲気になりました。「撮影、本番!」となっても。

子供たちとは本当に気が合うな、と思いましたよ。とてもナチュラルで、無防備。そして素直。こちらからこう言えば、こんな顔をする、こちらからこういうふうに言うと、こう返ってくる、みたいな。

大人を相手に駆け引きして、ワーワーやるよりも、子供たちと一緒の方がいいですね。子供たちって、本当に面白いから。子供たちは撮影の休憩時間に、僕に対して「先生、この子と付き合っているんでしょ?」などと言って、女性の名前を平気で黒板に書いたりするんですよ。こっちは「やめろよ、ばか野郎」みたいな…。子供たちって、そんな世界なんです。毎日、テレビを見てるから。

「雑誌『フライデー』に写真を撮られたでしょ」とも言ってくる。「先生、本当に付き合ってるの?」と。僕は「チュウしかしてないよ」と返答しました(笑)。本当にふざけてますよね。


《相棒の教師、榎本英樹役を務めた野村宏伸さんも注目された》

野村くんはもともと、映画「メイン・テーマ」で、薬師丸ひろ子さんの相手役としてデビューしました。最初は気持ち悪いな、と思ってましたけど、鍛え上げましたよ。僕は百戦錬磨。プロデューサーの石井ふく子先生のおかげで、いろんな現場で、いろんな方と仕事をしていましたから。すごい人たちばかりですよ。沢村貞子さん、森繁久彌さん、竹下景子さん、坂口良子さん…。たいがいの人と一緒でした。視聴率もなんとなく取れてましたよ。

野村くんは生意気なんですよ。彼の性格は少し暗いのですが、実は血液型はB型。一方、僕は〝スーパーB型〟というぐらいの性格なので、彼は大変だったと思います。これほど頭が変な人を彼は初めて見たんじゃないでしょうか。僕は彼に「明日、ゴルフに行くからな。お前の家に泊まりに行くから、準備しておけよ」と急に言ったり。ハチャメチャですね。

野村くんは僕のように、バーッと表現できない子でしたが、僕に歯向かったりもするんですよ。そういう場合は彼をメチャメチャ〝締め〟ましたね。「これは違うと思う」と突っ込んでくるとパコーンとやっつけるんです。本当にいいヤツですよ。


《ドラマでは、コンビのいい味が醸し出されていた》


野村くんが卵焼きを作りながら、セリフを言うシーンがあったんです。だけど、彼は「こんなことできません」と言う。「それをやるんだよ」と、こちらは思うんですけど(笑)…。彼はビビってしまって、セリフも出ない。卵焼きもビチャビチャになるし。本当に面白かったですよ。回を重ねてやっていくうちに、あうんの呼吸でできるようになってきてね。そこに子供たちがうまく入ってきて、いい感じになりました。

第2の〝田原俊彦時代〟到来と思いましたね。あれで助かったな、と。ファンの方にも火が付いた。彼女たちもきっと、うれしかったと思います。(聞き手 黒沢潤)

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