応仁の乱勃発の地として知られる御霊神社(上御霊神社、京都市上京区)が、かつて境内に構えていた茶店の名菓をお茶とともに味わう催し「ごりょうさんでいっぷく」を行っている。同神社の小栗栖憲英(おぐるすのりひで)禰宜がコロナ禍に友人を招いて境内にお茶席を設けたところ、不安な心が静まると好評だったことから参拝者向けに企画した。
今月20日には、屋根瓦のふき替えなどの修理を終えた絵馬所で催しが開催された。お茶とともに出されたのは、門前の老舗和菓子店「水田玉雲堂(みずたぎょくうんどう)」の名菓「唐板(からいた)」。小麦粉と砂糖、卵にわずかな塩で薄くパリッと焼き上げた素朴な煎餅だ。
同店は昭和17、18年ごろまでは境内の絵馬所の近くに店舗を構え、朝は門を開けるなどしていた。戦時中の灯火管制のため、神社から立ち退いて西門前に店を移した。
唐板は貞観5(863)年、神泉苑で御霊会が行われた際、神前に供えられた煎餅が原型。応仁の乱後に同店が再興し、500年以上作ってきた。
境内の美しい新緑を楽しみながらお茶をいただくのは格別で、市街地の喧騒(けんそう)から離れ、静寂の中に身を置くことができる。「神社の森を眺めながら静かなひと時を過ごしてほしい」と小栗栖禰宜。訪れた伏見区の公務員、松下奏未(かなみ)さん(27)は「静かで鳥のさえずりも水の音も聞こえる。緑が青々として美しく心落ち着くことができた」と話していた。
次回開催は27日午後1~4時、初穂料2千円(抹茶と唐板、上生菓子付き)。(田中幸美)
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