教育や環境保全、医療などさまざまな分野で社会貢献に取り組む団体を表彰する第27回「地球倫理推進賞」(一般社団法人倫理研究所主催、文部科学省・産経新聞社など後援)に2団体が選ばれ、3月29日に東京都内で贈呈式が行われた。受賞2団体の活動を紹介する。

歯ブラシを提供され喜ぶ子供たち。衛生指導で死亡率が大幅改善した(モザンビークのいのちをつなぐ会提供)

モザンビークのいのちをつなぐ会 「寺子屋」で貧困の連鎖断ち切る

国際活動部門で受賞した一般社団法人「モザンビークのいのちをつなぐ会」(北九州市)は、最貧国の一つといわれるアフリカのモザンビーク北部のスラム街に拠点を置き、子供たちに読み書きなどの教育を行い食事を提供する「寺子屋」を建設。無教育による貧困の連鎖を断ち切るとともに、手洗いや歯磨きを指導することで、5人に1人が5歳未満で亡くなっていた状況を大幅に改善した。

同会の榎本恵代表は「スラム街は安全性が確保できないとの理由で、国連や各国の公的な支援が入りづらい。そういった場所にこそ、手を差し伸べる必要がある」と語る。

また、地域の水不足を解消するため井戸を掘り、共同利用できる水道も整備。浅い地層は排水や排泄(はいせつ)物で汚染されているため、45メートルの掘削が必要だったが、「地域経済を回すため、スラム街の職人にも入ってもらった」(榎本さん)。

自立につなげることを目的に、活動は住民主体で取り組むことを大切にする。食糧難対策でも単に食糧を送るのではなく、地域で日常的に食べられている植物、モリンガを砂漠の緑化活動として植えてもらう「食べられる緑化」を推奨している。

今後も「働く場を創出するため、地域で必要とされている運送業や理髪店、薬局、食堂などの開設を支援していきたい」と榎本さんはビジョンを描く。

「JAMネットワーク」は児童養護施設で「言葉」による自立を支援

児童養護施設の子供たちにプログラムを行うスタッフら(JAMネットワーク提供)

国内活動部門で受賞したNPO法人「JAMネットワーク」(横浜市)は、児童養護施設の子供たちに、言葉によるコミュニケーション力を養成するプログラム「ことばキャンプ」を提供。約15年間で全国100以上の施設で実施し、施設職員への研修も積極的に行ったことが評価された。

プログラム誕生のきっかけは、3月まで代表を務めた高取しづか理事の経験にあった。夫の転勤で暮らした米国では、幼稚園や小・中学校で徹底した「話す・聞く」教育を行い、コミュニケーション力を育んでいた。高取さんは帰国後、米国の教育をヒントに、物おじせず言う「度胸力」や筋道立てて話す「論理力」など、コミュニケーションに必要な7つの要素を鍛えるプログラムを日本人向けに構築。平成14年に本にして出版した。

児童養護施設での活動を始めたのは平成20年。施設長から「コミュニケーション力でつまずく子供が多いのでお願いしたい」との依頼が来た。携わってみると、虐待を受け、コミュニケーションの原点となる家庭生活の機会に恵まれない子供たちも多かった。その影響で、苦しくても気持ちをうまく表現できず、心が折れやすい子もいた。

村上好(よし)代表は「就職後に人間関係を築けずに離職し、仕事も住居も失うケースも多い」とし、「活動を続け、自立をサポートしていければ」と話している。

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