「野菜、足りてますか?」と野菜不足の人に向けてSNSで呼びかけている飲食店が秋田県由利本荘市にある。「野菜のおいしさを知ってもらい、地域に活力を届けたい」と意気込む店主の思いを取材した。
由利本荘市のJR羽後本荘駅に程近いビル。2階に上がると、昼の時間帯だけ営業しランチを提供している店がある。
「いらっしゃいませ!」と迎えてくれたのは、店主の高原一馬さん(27)。
この店は、通常は夜に営業するパブだが、昼の時間帯だけ高原さんが借り、店の名前を変えて営業している。店名は「BOKUNOUKA」、由来は「ぼく、農家」だ。
実は高原さんは、由利本荘市石脇で100年続く農園の5代目。父と祖父とともに12棟のハウスで季節に合わせて野菜を栽培している。
いまはミニトマト、ナス、ピーマンなどを作っていて、栽培のこだわりは由利牛のたい肥を使って土づくりをしているところ。高原さんは「父親や祖父から教わることも多い」と話す。
高原さんは地元の高校を卒業後、滋賀県の園芸の専門学校に進み2年間学んだ。その後、宮崎県でカフェを経営する農家のもとを飛び込みで訪れ、トマトの栽培を中心に研修を受けた。
6年前にUターンし、実家の農園で働く高原さんは、野菜の収穫やスーパーへの出荷作業など忙しい日々を送っている。
農業の傍ら飲食店を始めた理由について、高原さんは「直売所に卸すだけだと、どうしてもお客さんが食べているところを見たり感想を聞いたりする機会がないので、実際に自分が作った野菜を調理してお客さんに食べてもらい、野菜についていろいろ言ってもらえるところがモチベーションになって農業も頑張れる」と話す。
午前11時。高原さんが収穫したばかりの野菜を持って店にやってきた。この日のランチに使う食材は、自身で栽培したミニトマトやナス、ピーマンのほか、シシトウやカボチャなど10種類。
素揚げやグリルで野菜のうまみをじっくり引き出す。味付けは塩だけだ。
そして完成した店の看板メニューが「ハヤシライス」。水を加えず完熟したミニトマトの水分だけで作ったルー。ピンク色に染まったご飯にもミニトマトが混ぜてあり、まさにトマト尽くしのハヤシライスだ。
付け合わせにも野菜がたっぷり使われていて、この日はナスのひき肉みそ炒めやもやしのナムルなど4種類が盛り付けられた。野菜のうまみが凝縮した目にも鮮やかなワンプレートだ。
ランチに訪れた女性は「店には以前、1回来たことがあったが、一度で野菜がたくさん取れておいしかったのできょうも来た」と話し、別の女性客は「高原農園の野菜はよくスーパーで手に取っている。栽培から調理まで全部自分でやっていることに敬意を表しながらいただいている」と感心した様子だった。
高原さんは「自分が作った野菜を自分の手で調理して、それを『おいしい』と言ってもらえるのはうれしい。ゆくゆくは自分で店を持って、うちの野菜を直売したり、加工品を出したり、より野菜に特化した店を作っていきたい」と笑顔で語った。
「野菜のおいしさを多くの人に届けたい」
高原さんはこれからも、真心込めて育てた野菜と自慢の料理で地域に活力を届ける。
※高原一馬さん・高原農園の「高」は「はしご高」
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