閉店間際のパン屋さんに、ふらっと立ち寄ったことを想像してほしい。店内にはまだパンがポツポツと残っていることがある。それらを見て何を思うだろうか。
もしかしたら「人気がないのかな」「作りすぎたのかな」などと思うかもしれない。しかし余ってしまったパンもたくさんの時間をかけて作られ、職人さんの思いが等しく込められているはず。そしてこれらのパンは、もったいないが廃棄されることも多いという。
そんなパンのフードロスに関心を持ってもらおうと、全国のパンを通信販売で届けるサービス「rebake」が、「ロスパンの教科書」というガイドブックを2月に作成。計1万冊を提携するパン屋さんに配布し、各店舗で購入者に渡している。
ロスが出るのはどうして?
rebakeは、合同会社クアッガが2018年にサービスを開始。閉店後まで売れ残ってしまい、まだ食べられるのにどうしても捨てざるを得ないパンを「ロスパン」と呼び、積極的に取り扱っている。
ロスパンを注文すると、冷凍または冷蔵のパンが、お店のおいしさはそのままにたくさん入ったセットで届けられる。
販売サイトには、北海道から沖縄まで、全国各地のパン屋さんの店名が並んでいる。なんでも、全国のパン屋さんの15%に当たる店舗がrebakeに登録しているそうだ。
これまで約6年間のロスパンの廃棄削減量は約830tに上る(2024年9月現在)。少し想像しづらいかもしれないが、広さで表すと東京ドーム28個分に相当する量だという。
そんなrebakeが、ロスパンが発生する背景を消費者に知ってもらうためにまとめたのが、「ロスパンの教科書」という12ページの冊子だ。
家の中にある食べ物のうち、4%のものは食べられずに捨てられてしまうと言われています。
でも、パン屋さんでは更に多くのロスが発生しています。パン屋さんも減らしたいと思っているロスパン。それなのに、ロスパンが発生する理由とは何でしょうか?
“教科書”の冒頭はこのよう問いかけから始まり、その実情を紹介する形でインタビューやデータが掲載されている。
例えばパンが売れる時期は季節によって変わるとし、「パンを食べたくなる時はいつだろう?」というページでは、実際のパン屋さんにインタビューした年間の売り上げの動きを紹介。
兵庫県の人気パン屋さんに聞いたところ「1番パンが食べられる春と、1番少ない夏とでは30%も差があります」とのことだ。
この理由について、rebake利用者による調査を元に同社は「暑い日は、パン屋さんから足が遠のく人が多いようです」と、外出のしやすさを挙げている。
そのほか、教科書では「パンを買いたくなるポイント」「パン屋さんに行きたくなる日」「パンができるまでに必要な時間」などを写真や画像を交えて紹介している。
また、売れ残ったパンがどうなるのかを「ロスパンの行方」として記載。福岡県の人気パン屋さんは次のように答えている。
仕方ないとわかっていても、パンを廃棄するのはとても悲しいです。
毎朝、朝早くから夜遅くまで時間と手間をかけて、心をこめて美味しく食べていただきたいと作ったパン達を、自分の手でゴミとして捨てなければならない瞬間は本当に心が痛みます。
ロスパンの現状を伝えるには“当事者の声”も大事なポイントだとし、パン屋さんに取材したという同社の担当者は、パン屋さんの実情に「話すといつも泣きそうになる」と語っていた。
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