「健康のタネ」のコーナーでは今回、「痩せ型の中性脂肪」を取り上げます。中性脂肪と聞くと肥満気味の中高年というイメージがあるかもしれませんが、実は近年、若い世代、特に痩せ型の肥満が増えています。
世代を問わず普段の生活で気を付ける点や、見た目では分からない中性脂肪に隠された様々な症状について、専門医に聞きました。
中性脂肪について話を聞いたのは、福井大学病院内分泌・代謝内科の銭丸康夫医師です。銭丸医師は、そもそも、中性脂肪とは「食事からの栄養素をもとに身体でつくられた脂質の一種で、エネルギー源となる物」とします。
脂肪や炭水化物は生活に欠かせないエネルギーですが、摂りすぎると身体に様々な悪影響を及ぼすといいます。銭丸医師は「脂肪だけじゃなく炭水化物も、たくさん摂れば余剰のエネルギー源となるので、それが体の中で中性脂肪に変換されてしまう」と注意を促します。
中性脂肪が多くなると、肥満など外見の変化だけでなく体内にも変化が表れます。
福井大学病院内分泌代謝内科・銭丸康夫医師
「中性脂肪やコレステロールの値は、それ自体が高いと動脈硬化が進展して、心臓の血管に病気を引き起こすリスクが増加する可能性がある」
恐ろしいのは中性脂肪の値が高くなっても、自覚症状がほとんど無いということです。気付かないうちに肥満になってしまう「隠れ肥満」の可能性があります。
基準としては、体重と身長から算出される肥満度を表す体格指数(BMI)が25を超えると肥満となります。例えば20歳女性の平均身長体重でみると、158センチ・49キロのBMIは体重割る身長の二乗で約19.6となります。
ただ、隠れ肥満の場合は、BMIが25を超えていないにも関わらず、体内に蓄積された体脂肪率が30%以上ある症状をさし、「正常体重肥満」と呼ばれています。若い女性の約30%がこれに該当すると言われています。
そして、中性脂肪などがもたらす自覚が無い症状がもう一つあります。「脂質異常症」です。脂質異常症は、血液中の脂質の値が基準値から外れた状態を指します。
銭丸医師によれば「体内の血液中LDL(悪玉コレステロール)が高く、HDL(善玉コレステロール)が少ない。そして中性脂肪が高い。この3つの検査値の異常によって診断されるのが脂質異常症」ということです。
脂質異常症はそれ自体に自覚症状もなく放置されがちですが、動脈硬化を進行させ心疾患や脳血管疾患のリスクを高めます。
動脈は心臓から送り出される血液を全身に運び、栄養や酸素を行きわたらせる役割を持ちます。勢いよく押し出される血液の圧に耐えるため、動脈には柔軟性が備わっています。
動脈硬化はこの血管の柔軟性が失われ、固くなる状態のことです。血液中の悪玉コレステロール(LDL)が増えすぎると、コレステロールは動脈の壁の内側に入り込んで溜まってしまいます。その結果、動脈壁は厚く硬くなっていきます。さらに善玉コレステロール(HDL)が少ないと、余分なコレステロールが十分に回収されず、溜まったままになります。
脂質も動脈を通って全身の組織に運ばれますが、脂質異常症の症状があると、動脈の内側に悪玉コレステロールなどの脂質が溜まり、コブのようなものができます。そのコブが大きくなることで血管が狭くなり、破裂して血栓が詰まることで心疾患などの病気を引き起こします。
中性脂肪自体は動脈硬化への直接の原因にはなりませんが、中性脂肪が増えすぎると悪玉コレステロールが増え、善玉コレステロールが減りやすくなることが分かっていて、3つのバランスが重要です。
脂質異常症・隠れ肥満のどちらも、日頃の生活習慣を見直し健康維持を心がけることが大切です。
福井大学病院内分泌代謝内科・銭丸康夫医師
「脂質異常症も自覚症状がないのが特徴。知らないうちにどんどん動脈硬化が進んで、ある日突然重い病気になってしまうのが1番怖いので、やはり検診が大事」
その上で、日頃の食事はバランス良く、過食にならないようにし、エネルギーを消費するための運動が大切だということです。
自覚症状が無いため発見が難しい「中性脂肪による隠れ肥満」と「脂質異常症」は、生活習慣を見直したり定期的に検診を受けるなどして見逃さ無いようにしましょう。
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