様々な事情で親などと暮らせない子どもたちを迎え入れ、養育する「ファミリーホーム」。里親か児童養護施設での養育経験がある人が、自治体からの認可を受けて自宅などに迎え入れて育てる制度で、全国に446カ所・福島県内には5カ所ある。まるで家族のように暮らす、福島県郡山市のファミリーホームを取材した。
大家族のような暮らし
福島県郡山市にある「ファミリーホームいぶき」。この日の夕食は、子どもたちが好きなキーマカレーだ。食卓を囲む姿は兄弟のようにも見るが、全員血の繋がりはない。
ここには、ホームを運営する仁井田三枝子さん(64)と、3歳から9歳の子どもたち6人が暮らしていて、3人の職員が交代で生活をサポートしている。
大声を出して笑ったり、ケンカもたまにしたり…一つ屋根の下で子ども同士が兄弟のような関係を築けるのも、ファミリーホームのメリットだ。
仁井田さんは「手がかかる子だと、里親とのマッチングが難しい場合がある。大きな専門性のある施設で見た方がいい場合もある」と話す。
里親でもなく児童養護施設でもない、その中間に位置づけられているファミリーホーム。子どもたちは原則0歳から18歳までこの場所にいることができる。
家に帰りたくない 逃げ出した少女
中学3年生の時から3年間、ファミリーホームいぶきで生活していた渡部理恵さん(23)。「父親と母親の家庭内暴力がすごくて。その日は、私の命が危なかった。頭からとかも出血している状態で」と当時の事を話してくれた。
児童相談所に、一時保護された渡部さん。家庭に戻す判断を下されたとき「家に帰りたくない」と児童相談所から逃げ出したことあった。渡部さんが最後に選んだ場所が、ファミリーホームいぶきだった。
「少なくとも、私が過ごしたファミリーホームは、すごく温かい生活で、本当にある意味青春でした。他の人には経験できないことだから」と語った。
財政難…地域や企業が支えに
子どもたちの大切な居場所となっているが、運営面では厳しい財政状況にあるのが実情だ。
国と県から支給される養育費は、子ども一人あたりひと月20万円。そこに職員の人件費や光熱費、食費、教育費などすべてが含まれている。できる限りの節約や食事の工夫をしても、毎月赤字が続いている。
地域の人や企業からの差し入れや支援などが、大きな支えになっている。
子どもが笑顔で暮らせるように
元々は児童相談所の職員として働いていた仁井田さん。どのような事情があっても、子どもたちが笑顔で暮らせるようにしたいとファミリーホームの運営を続けている。
「“私ってかわいそうな子”と、子ども自身が思っていないことがすごく嬉しい。だから、やれます。子どもたちが、強く生きていってくれていることが嬉しいですね」と仁井田さんはいう。
巣立った子どもから感謝の言葉
2024年で設立から10年を迎えたファミリーホームいぶき。この日、支援をしてきた人などが集まりこれまでの歩みを振り返った。
5年前にファミリーホームを巣立ち、現在は東京で生活する渡部さんは、直接仁井田さんへ感謝の思いを伝えた。
「ファミリーホームを卒業したから、もう元気に人生ができるってわけではなくて、独り立ちしても大変なこといっぱいあって、何度も泣きました。でもそれを乗り越える力、乗り越えられなくても何とかしてそこで踏ん張る力を、ファミリーホームいぶきでは育ててもらった」
子どもたちが夢や希望を持って、自立していけるように。仁井田さんとファミリーホームが大切にする思いは変わらない。
(福島テレビ)
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