国の特別天然記念物コウノトリの野生復帰に取り組む兵庫県立コウノトリの郷(さと)公園(豊岡市)は、2024年度の繁殖シーズンを経て全国の野外生息数は8月末現在で470羽になったと発表した。14府県51巣から134羽が飛び立った。23年度の同時期は12府県49巣から105羽、野外生息数383羽だった。
郷公園によると、05年の豊岡での初放鳥後、17年に100羽、20年に200羽、22年には300羽に達した。飼育数は8月末現在で96羽。
繁殖地は府県別では新たに新潟県(上越市)、千葉県(野田市)が加わった。営巣箇所数は府県別で▽兵庫20▽京都7▽福井6▽茨城4▽鳥取3▽石川、島根2▽徳島、香川、栃木、千葉、広島、佐賀、新潟1。営巣場所は巣塔以外に電柱、電波塔が新潟、千葉、茨城など12カ所あった。
一方、増加に伴って救護などの課題も全国に広がっている。防獣ネットや防鳥テグスに絡まったり送電線で感電したり、24年度は救護12羽(うち県外4羽)、死骸収容11羽(同5羽)だった。
関連の相談は県外からも増え、郷公園の獣医師が出向くこともまれにあり、レントゲン機材を持参したこともあったという。救護に遭遇するケースは県外では現状は少ないが、郷公園では9月には県外獣医師らの研修を受け入れ、県内の自治体を想定した救護対応マニュアル作りも始めた。
海外向けにも、7月には絶滅危惧種のシロハラサギ保護育成のためブータンからの研修員2人を受け入れ、11月にもウガンダからの研修員4人を迎える。
久下隆史園長は「急速に増える状況が続くのか否か、予測は難しいが、野外生息数の増加はいい方向で進んでいる」とした。一方で増加に伴う課題もあり「コウノトリに関する情報は文化財という位置付けで文化庁に集約されるが、各自治体での部署は実情に応じてさまざまだ。500羽を超えてくると郷公園のマンパワーでは対応しきれなくなる。広く県をまたぐ事業として国への働きかけも続ける」と話した。【浜本年弘】
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