「イット!」でこれまで、給料の未払いにより大量の職員が辞めてしまった首都圏の老人ホームの悲惨な状況をお伝えしてきた追跡取材「“見捨てられた”老人ホーム」第6弾。千葉市内の施設では10日、退去期限の日を迎えた。一方で既にこの施設の次の運営先が決まったかのような動きも見られ、詳しく取材した。

退去期限の日を迎えた千葉の施設で“最後のランチ”

連日お伝えしている、老人ホームで職員が一斉退職した問題。千葉市内の施設では10日、退去期限の日を迎えた。

退去期限の日となった10日、千葉の施設には引っ越し業者の姿が
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そして、施設では、入居者への食事も10日で打ち切りとなるため、この日が最後のランチとなった。

午前11時過ぎ、施設では敷地内に横づけにされたトラックの荷台が引っ越し荷物でいっぱいになっていた。

引っ越し業者:
9件分積んでます。急きょ、きのう連絡がきて、「今日できますか?」ということで。

入居者の多くは、わずか数カ月で退去を強いられていて、家族の心境は複雑だ。

90代の入居者の家族:
(入居から)まだ半年です。せっかく慣れてきたところだったので、また変わるのかなって。(Q.運営会社について)とにかく無責任ですよね。怒りとかよりもショックの方が大きい。

さらに10日の昼食で食事の提供打ち切りも告げられ、最後のランチが用意された。
その献立は、白身魚のフライ、カリフラワーとブロッコリーの洋風蒸しとキャベツのマリネだった。

最後のランチの献立

“見捨てられた老人ホーム問題”は、職員の情報提供をきっかけに発覚した。

職員の情報提供をきっかけに発覚

2023年10月にオープンしたばかりの東京・足立区の住宅型有料老人ホームで、入居者たちを残し職員が一斉退職したが、発端は給料の未払いだった。元職員は「9月30日に給料が支払われなくて…」と話す。

「施設を閉鎖する」貼り紙残し姿消した運営会社社長は…

「施設を閉鎖する」との貼り紙1枚を残し姿を消した運営会社社長を「イット!」は追跡。
群馬県内にいることを突き止め、その姿をキャッチし直撃したが、何を質問しても「法務対応する」の一点張りだった。

運営会社社長は貼り紙1枚を残し姿を消した

ーーご自身の気持ちとしては?
老人ホームの運営会社社長:

法務対応をベースとしてやっていきますので。

取材に「法務対応」を連発する運営会社社長

ーー感情的に「申し訳ない」とか「心配だな」といった気持ちは?
老人ホームの運営会社社長:

ここに関しても本当に現状として法務対応なので、弁護士と話をして法務対応でやっていこうと思う。

収入を失った職員からは「職員の人もみんな被害者」「生活が苦しい」の声

収入を失った職員は「『帰りの交通費も足りない』と言っていた方(職員)もいるし、『家賃払えないからどうしよう』という声はたくさん聞きます」「生活に関しては、貯蓄を切り崩してやるしかない」「やっぱり職員の人もみんな被害者だなと思って」と話す。

運営会社は赤字続きで総額6億円の未払いが

その後の取材で、運営会社は2023年7月以降、毎月赤字経営だったことが発覚。総額6億円近い未払いがあったことが分かった。

施設に残された入居者の暮らしにも大きな影響があった。

足立区の施設の入居者家族は「お風呂どのくらい入ってないの?と聞くと『2週間入ってない』って」「“終のすみか”と思って入ったのに」と嘆いた。

足立区議会で問題取り上げられる

9日の足立区議会では、この問題が取り上げられた。

9日の足立区議会で議題に

議員:
いきなりこういった事業者が撤退するとですね、そこを利用していた方々が行き場を失ってしまうと。

区の担当者:
今後の課題としては、やはりそういった時に、ちゃんとケアが継続できるような仕組みを作らないといけない。

自治体が対策に乗り出す動きも出てくる中、同様の問題は、同じ会社が運営する千葉市や神奈川・横浜市の老人ホームでも起きていたことが分かった。

足立区の施設と同様の問題は千葉市や横浜市の施設でも

千葉市の施設に夫が入居している妻(70代):
シーツも取り替えないのでびちゃびちゃ。布団汚くても取り替えない。

9月末に突然、各施設の入居者は10日10日までに退去するよう求められ、ついに退去期限日を迎えたのだ。

ボランティアスタッフなどに見送られ、住み慣れた施設をあとにする高齢者の姿があった。自動販売機の撤去作業なども行われるなど、施設では閉鎖への動きが加速していた。

残された入居者はいないのかーー。

各施設のある自治体を取材すると、東京・足立区と横浜市の施設では、10日までに残っていた入居者全ての転居先が決まり、移動が完了するという。

一方で、千葉市の施設には、まだ転居先が決まっていない入居者が数人いるとの回答があった。

数人転居先決まらず…千葉市の施設は次の運営先が決まったか

この千葉市の施設の今後を巡っては、気になる情報があった。

別の運営会社の名義で掲載された老人ホームの求人情報に12月オープンの文字

ある求人情報サイトを見ると、別の運営会社の名義で掲載された老人ホームの求人情報に千葉市の施設と同じ住所が記されていて、12月オープンと書かれていたのだ。

既に次の運営先が決まっているのかーー。

入居者の受け入れ先探しに奔走した家族からは、複雑な声が聞かれた。

千葉市の施設入居者の家族:
引っ越しが2回も3回も行き来しているんだから、そのままいたかったよねって感じ。

千葉市の施設入居者の後見人:
それなら一旦閉鎖しないで経営者変更で継続していただければ良かった。

そこで、求人サイトに記された運営先を取材すると、「施設跡地の利用については、現時点ではっきりと決まったことはない」との回答だった。

一方で、残された入居者について、「千葉市の要請を受け、受け入れ先などの調整を行っている」としている。
(「イット!」10月10日放送より)

※FNNでは「老人ホーム一斉退職問題」を継続取材しています。情報提供してくださる方は、ぜひこちらまでご連絡ください。

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