12日に開業する山形県西川町のアンテナショップ「田舎割烹にし川」の外観(東京都杉並区)=西川町提供

山形県西川町は12日、東京都杉並区高円寺にアンテナショップ「田舎割烹(かっぽう)にし川」を開く。特産品を生かした料理を通じ、観光客を含むファンら町を支える「関係人口」を創出する。菅野大志町長が参加するイベントも開き、企業や個人と組んだ地方創生策をPRして、町の取り組みにより多くの人を巻き込む。

同店はJR高円寺駅の高架下商業施設内にある。店舗面積は約50平方メートルで、22席を備える。整備には国の「デジタル田園都市国家構想交付金」を活用した。

「田舎割烹にし川」の開業に先立ち、関係者向けレセプションと交流会を開いた(9日、東京都杉並区)=西川町提供

山菜やキノコが入った鉄鍋にそばを入れて食べる町の名物「月山山菜そば」や「月山和牛」のステーキ、第三セクターで手がける純ドイツ式の「月山ビール」などを味わえる。客単価は昼1000〜2000円、夜5000円程度を想定している。

店の運営は、どりーむずかむとぅるー(東京・杉並)が受け持つ。同社の清水幸佑社長は生まれ故郷が西川町と隣り合う寒河江市。「山形料理と地酒 こあら」など複数の飲食店を東京都内で展開している。

菅野町長は関係人口の創出に熱心だ(3日、西川町役場)

特産品マーケティングの場としても活用し、「地域が稼ぐ力」も高める。例えば、山菜の加工品を試験的に提供し、来店客の反応をみたうえで今後の生産・販売方針を決めることなどを想定している。

山形県のほぼ中央に位置する西川町は総人口が約4600人。2022年10月時点の高齢化率は48%で、山形県平均(35%)を大きく上回った。民間の有識者らでつくる「人口戦略会議」が4月に公表したリポートでは「消滅可能性自治体」に分類されている。

「隠れ積雪日本一」をうたうほど自然環境も厳しいが、転入人口から転出人口を引いた町の社会減は縮小傾向にある。23年度はゼロだった。

22年から町長を務めている菅野氏は「若者を含む関係人口がいずれ定住人口に変わっていけば、消滅可能性自治体を脱することは十分可能だ」と確信。デジタル住民票NFT(非代替性トークン)の発行や新たなまちづくり拠点の開設などで関係人口をさらに増やそうとしている。アンテナショップ開設もそうした取り組みの一環だ。

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