復活した呉市の名物カレー店に注目します。
店長は、18歳の若者。”祖父の店と味を守るため”奮闘する姿を追いました。
半日以上じっくり煮込んだ「オリジナルカレー」
先月、リニューアルオープンした呉市で人気を誇ったカレー屋「ホワイトハウス」の名物です。
(岡野キャスター)
「昔ながらの喫茶店のようなレトロな雰囲気が漂っています。家具、照明、飾り物、ひとつひとつに、こだわりを感じる…」
カレーを作っているのは松原満里愛(まつばら まりあ)さん。
この春、高校を卒業したばかりの18歳。
この店の店長です。
(松原満里愛さん)
「私がいまやっている場所で、私の祖父も同じようにやっていたんだなと思うとすごく懐かしいです」
店がオープンしたのは1978年。満里愛さんの祖父・英伸さんが開業しました。
”呉のシンボル”として地元で愛されてきましたが、2年前に祖父は病気で他界。
店をどうするか?何度も家族で話し合う中、満里愛さんは決意を固めたといいます。
(松原満里愛さん)
「44年間も続けた店をなくしてしまうのはすごくもったいないし、むかし来たお客さんにも、またホワイトハウスが復活したって来てもらいたいので、祖父の味をもう一回作ろうと決めました」。
定休日の午前7時すぎ。
店には、満里愛さんの姿が。
(電話対応・松原さん)
「きょうは、開いてないんですが、今週の木金土営業なので」
3日間で提供するおよそ90食分を、ひとりで準備しなければいけません。
祖父のカレーで最も重要なのが玉ねぎです。
小さいころから作る姿は見てきました。
でも、その秘伝の味について聞いたことはありません。切り方も一回一回変え模索する日々が続きます。
(松原満里愛さん)
「44年間の味は絶対に出せないし、ホワイトハウスのカレーは甘みが特徴。甘みを出すのに玉ねぎが重要で、玉ねぎの具合だったりで食感だったりで少しずつ変わってしまうことがあるので、ベテランの祖父に聞きたい」
在りし日の祖父に聞いてみたい。
そんな満里愛さんの気持ちがわかっていたかのように、祖父・英伸さんはヒントを残してくれていました。
(松原満里愛さん)
「亡くなる最後に作ったカレーだと思います。玉ねぎがこれだけ溶けてドロドロになって、甘み成分が出ていて、このタイミングでリンゴを入れる。これがなかったら全然わからなかった。(動画を)撮っていたのは、誰かに伝えたかったのかなと思います」
ただ…、残されていた動画は一部のみ。
「たゆまぬ努力をすること」
祖父は、あえてそう教えてくれているのかもしれません。
(松原満里愛さん)
「祖父からカレーの作り方を一(いち)から教えてもらっていないので、炒め具合とか、水の量を最初どれくらいでやるとか。祖父は40年も作ってきたから勘でわかるけど、私はちょっずつ試さないとわからなかったので」。
作るたびにメモを取り研究を重ね、ようやく納得のいく仕上がりに。
そして、自分らしさも出していきたいと、新メニューを開発しました。
ビーフカレーです。
使っているこの肉にはこだわりがあります。
この牧場は牛を自然放牧でのびのびと育てています。
脂身が少なく、高たんぱく。ビタミンなどの栄養素も多く含んでいるといいます。
育てているのは、満里愛さんの両親。
(満里愛さんの父・正典さん)
「基本ここと、この周辺の草しか食べないので、100パーセント三良坂産のお肉やミルクが提供できるのがすばらしいところ」
放牧だけでなく、チーズ工房も開いた酪農家で、娘にも、カレー店を通して成長してもらいたいと、背中を押しました。
(満里愛さんの父・正典さん)
「若いうちに苦労しろじゃないけれど、言われたことをやるんじゃなくて、自分で考えて物事を成し遂げるプロセスで、人が成長すると思うので。満里愛の手で、より濃い、熟成したカレー屋さんにしてほしい」
ホワイトハウスは復活オープンから大盛況。
祖父の頃にはなかったビーフカレーも好評です。
1日限定20食でスタートしましたが、40食以上販売する日もあります。
多忙な日々を送っていますが、原動力となっているのは。
(5人組の客)
Q:むかしの味とどう?
「変わらないよね」
「なんかうれしいですよ」
「この辺が元気になる。寂しかったからね」
そして、カレー作りだけでない”祖父のあたたかさ”も感じることができました。
(4人組の客)
「水害で断水になったとき、あのときにここだけ、井戸水をみんなにどうぞって、こんなふうに。みんなが待たずにと4、5人が一度にもらえるように」
「ご自由にお取りしてくださいと」
「お礼がてらと思って。ようやるがんばるよね」
「全然、お孫さんは会ったことがなかった」
2年ぶりに活気が戻ってきた「ホワイトハウス」。
祖父の思いに少しでも近づきたい。18歳の奮闘はこれからも続いていきます。
(松原満里愛さん)
「お客さんがこれくらい来たよとか、昔のお客さまがおいしいと言ってくれたよとか(祖父に)伝えたいです。これからも頑張ってね、これからもホワイトハウスをよろしくねって言ってくれたらすごくうれしいです」
<スタジオ>
実は、大学進学をいったん取りやめて、店の再開を決意した満里愛さん。
友人の楽しそうにしている姿をみて、正直うらやましいと思ったこともあったそうですが、誰でも経験できることはないし、自分の成長に確実につながっている。店への思いがますます強くなっていることも語ってくれました。
(エディオン女子陸上部アドバイザー・木村文子さん)
「すごく優しさが伝わってくる満里愛さんなんですが、カレーを作っている、試行錯誤しているあの姿。熱い気持ちもあるんだなと思うと、これからどんどん応援していきたいです」
天国のおじいちゃんも、きっと喜んでいると思います。
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