「イット!」が連日追跡してきた“見捨てられた老人ホーム”問題。
元職員や入居者家族から続々と情報が寄せられる中、取材班は実の母が入居後1カ月で亡くなったという女性のもとを訪ねると、「私の母も最後は見捨てられちゃったのかな…。結局1カ月で亡くなっちゃいましたし、ものすごい後悔と母に対しての懺悔はあります」と涙ながらに語った。

「母の貯金額が…」2023年12月“認知症”80代母を施設に

母に懺悔したいと後悔する思いを語った千葉県内に住む50代のBさん。

この記事の画像(44枚)

2023年12月、認知症の傾向があり、寝たきりの80代の母を東京・足立区の住宅型有料老人ホーム「ドクターハウス ジャルダン入谷」に入居させた。

亡くなった元入居者の娘:
母の貯金額がそうそうなかったんですよね。やっぱり安いってところで突っ走ってしまったところもある。

2023年10月にオープンしたばかりだったこの施設。月額利用料が10万8000円と格安だったことが決め手になったという。

ところが、母を入居させた直後、施設内の様子に違和感を覚える出来事があった。

亡くなった元入居者の娘:
母に会いに行くたびに職員さんの数が減っている。見舞いに行ったときに、母は私の顔を見た途端に「喉カラカラなの水ちょうだい」と言ってたので、どれだけ我慢してたのかと。
(母が)一生懸命(呼び出し)ボタンを押しても誰も来てくれない。お金が安いから仕方ないのかなと思っていましたけど…。

訪問医が「今日持つかな」と話すも娘の耳には届かず…

職員が不足していて入居者のサポートが行き届いていないーー。

一連の問題は、まさにBさんの母が入居した入谷の施設の職員の情報提供をきっかけに発覚した。

ジャルダン入谷・元職員:
9月30日に給料が支払われなくて、職員がどんどん辞めてしまっている状況で。

給料の未払いをきっかけに、入居者たちを残し職員が一斉退職。同じ会社が運営していた全国の4つの施設は、10月10日に閉鎖された。

そして今回の告発により、既に2023年の年末頃から施設内部は危機的状況だったことが判明。Bさんが恐れていた事態は、入居からわずか1カ月後の2024年1月に起きた。

亡くなった元入居者の娘:
看取る(みとる)というか“みとれなかった”んですね。
母が亡くなる当日の朝に容体が急変したらしく、訪問してくれるお医者さんが「ちょっと今日持つかな」みたいなことを職員さんに話したらしいんです。その時点で電話をしてくれれば、私はもちろん駆けつけて、もしかしたら間に合ったかもしれないんですけど、連絡が来たのは夜の7時半ぐらいで、「もう息していないです」って言われてしまったんですね。

突然の連絡を受け、Bさんが駆けつけると、既に母は亡くなっていたという。

亡くなった元入居者の娘:
何でもっと早く言って電話くれなかったんだろうと思って。昼に電話してくれたら絶対間に合っていたはずなのに、もう冷たくなってましたし。「なんでそんな亡くなって何時間もたった後に電話するの?」って、ものすごく怒りも湧きますし…。

容体が急変した母を見守ってくれていたのか、施設を疑う気持ちと、母を施設に入れた自分を責める気持ちが交錯しているという。

亡くなった元入居者の娘:
(職員が)ちょっとずつ顔を見に行ったり気にしてくれてなかったのかなって。(母は)1月が誕生日だったんですけど、誕生日の日に見舞いに行ったときも、「お誕生日おめでとう」って言って、そうしたら母が「次いつ来てくれるの?」っていうから、「また2週間後ね」って言ったら、手を握られて「待ってるからね、私待ってるからね」って言ってくれて、それが最後だった。母に対して、そこ(の施設)を選んでしまった私の責任もあるのかなと、すごく後悔しています。

母の死を悔やむ娘に8カ月経って請求書が届く

今も悔やんでいると話すBさんのもとに9月、施設から未払い分の請求書が届いたという。

ーー何カ月たってる?
亡くなった元入居者の娘:
8カ月くらいです。いきなり母の口座が引き落とせなかったから、2週間以内に振り込んでくださいって。いやひどいなって思って…。

施設内で亡くなる入居者を巡っては、同じ会社が千葉市で運営していた「ジャルダン寒川」の元職員Aさんがこう証言した。

「ジャルダン寒川」の元職員Aさん:
(施設で亡くなる入居者は)多かったですね。多いときは月に7~8人。ほぼ毎日のように救急車が来てる時もあった。6月7月は多かった記憶。他の施設にも行ったことあるけど、(他では)一年に数名とかのレベルだと思う。

多い時は月に7~8人の入居者が亡くなったとの証言に、専門家は“少し多すぎる”と指摘する。

東洋大学 福祉社会デザイン学部・高野龍昭教授:
常識的には少し多すぎると考えられる。160人の入居定員がある老人ホームとはいえ、これほど亡くなるというのは何らかの運営上の課題、あるいは提供している介護に問題があると言わざるを得ない。

「ジャルダン寒川」の元職員Aさん:
その時に聞いたのが、「今、寒川・千葉は赤字だ」と。利益が出ないから満床にすると聞いてたが、それに伴い職員もいなければ無理じゃないですかという話もしたけど…。

施設の運営側は、職員不足が指摘される中で入居者を増やし続けたという。

東洋大学福祉社会デザイン学部・高野龍昭教授:
利益優先の運営・経営が利用者のケアに十分に対応できず亡くなるケースが多かったことも予測される。こういうことが起きていることに関しては、由々しき事態だと思う。
(「イット!」 10月17日放送より)

※FNNでは「老人ホーム一斉退職問題」を継続取材しています。情報提供してくださる方は、ぜひこちらまでご連絡ください。

この記事に載せきれなかった画像を一覧でご覧いただけます。 ギャラリーページはこちら(44枚)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。