衣服や生活雑貨、食品など人気ブランド「無印良品」のアイテムに囲まれた中長期滞在型宿泊施設「MUJI BASE TESHIMA」が、香川県の離島「豊島」にオープンした。3年に1度開催される「瀬戸内国際芸術祭(瀬戸芸)」会場の一つで「アートの島」として親しまれている豊島。再生した古民家を活用した施設で無印良品のアイテムのある暮らしを体現できる施設とあって、人気を呼びそうだ。運営する良品計画(東京都文京区)の長田英知執行役員は、「豊かな自然や文化にも恵まれたアートの島で、『暮らすように過ごす旅』を満喫していただければ」とPRする。
瀬戸芸の関連施設をリノベ
豊島は瀬戸芸の会場の一つで、建築家の西沢立衛氏らが手がけた豊島美術館をはじめとする「アートの島」として定着。面積14・5平方キロ、人口750人弱で、高松港や岡山県玉野市の宇野港からフェリーや旅客船で40分ほどで行ける。
宿泊施設は平成22年の第1回瀬戸芸で、作品兼レストラン「イルヴェント」を運営するためのスタッフの寮としてリノベーションされた当時築77年の古民家。壁や床が白く、「白い寮」と呼ばれた。その後、簡易宿泊施設として開業したが閉業し、良品計画が取得。同社が展開する宿泊事業「MUJI STAY」の一環として、無印良品の世界観を体現した1棟貸しの宿泊施設に生まれ変わった。
無垢(むく)材の床や、ダイニングとリビングの間の壁に設けられたトンネル状の穴など独自の世界観を実現。同社のインテリアブランドがコーディネートを担当し、ビンテージ家具や無印良品のベッド、家電、食器のほか、レコードのセレクションや「MUJI BOOKS」による選書本、瀬戸内地域の現代アート作家らの作品を配した。
フードアメニティーも無印良品のレトルト食品や冷凍食品のほか、豊島産を中心にレモンサイダーや米、塩などの地場産品が入っている。
地域への土着化図る
同社は、住宅の首都圏集中や空き家、失われていく郷土文化などの課題と向き合い、地域住民と課題や価値観を共有し、地域の活性化を目指す。
長田執行役員は、「新型コロナウイルス禍を経て、ライフスタイルや旅のあり方も変化している。遊休資産を活用した関係人口の創出が重要」としたうえで、「もっと自由な暮らしを提案したい」と説明。「地域文化の体感基地」をコンセプトに、地域の文化や食材を生かした暮らし、都市から離れた場所での穏やかな日常を体験し、地域の魅力を再発見するための場所を目指している。
関係人口、移住者増を視野に
同社は、同施設を含め、年内に4カ所程度の新規オープンを計画。インバウンド(訪日外国人客)が多い都市部からのアクセスが可能で、地域に根付いた文化があり、移住・関係人口創出力が見込めるエリアとして千葉、近畿、瀬戸内をピックアップ。自治体や地域事業者と連携して物件を探している。
第1弾は千葉県鴨川市で昨年8月にオープン。敷地内で無農薬栽培している野菜やハーブ類の収穫体験が好評で、インバウンドにも人気で4カ月先まで予約の取れないほど人気だそうだ。
今回の豊島ではオプションサービスとして、小豆島の地ビールのお取り寄せや出張寿司サービス、エステ体験などを予定している。
予約受け付けは、旅行コミュニテイー・宿泊予約プラットフォーム「Airbnb(エアビーアンドビー)」が担う。両社は令和4年9月に日本の宿泊施設の多様化と地域のにぎわいづくりを目指して、包括連携協定を結んだ。
Airbnb Japanの田邉泰之代表は「ホストとゲストが旅の前後に連絡を取り合うことにより、地域を好きになり、また来たくなり、そこから交流人口、関係人口、移住というところまでつながる可能性がある」と話す。(和田基宏)
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延べ床面積約83平方メートルの木造平屋。2泊以上の予約のみで、1泊1棟2人で4万9000円~、清掃費は別途1万5000円。追加料金ありで最大4人まで。
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