今年もブルーベリー畑に春がやってきた。腰の手術の傷も癒え、私は残雪の畑で雪囲いを外し、剪定作業を行った。花芽はしっかりとついていた。

毎年、あちこちに生食用あるいはジャムを配っている。近所の人、妻が通うスポーツジムの仲間、そして私の友人たちへと。

大学時代、同じゼミで研究したN君もその一人だった。生食のブルーベリーを送ると、お孫さんの動画を送ってよこす。男の子だ。

「おいしい?」と彼。「おいちいよ」。たどたどしい声で紫の粒を頬張る姿に私は感激する。奥さんの笑顔も背後に。彼は愛妻家で、喧嘩をしたためしがないという。わが家とは大違い。私は恥ずかしかった。

2年前の1月。彼は近頃疲れ気味だとメールしてきた。そして5月、突然亡くなった。70歳。息子さんから電話があった。その声はN君そっくりで、私は目頭が熱くなった。

奥さんに彼との思い出を記した長い手紙を送った。しばらくして返信の封書が届いた。今はつらくて手紙を読み通すことができないとあった。

それから音信不通となった。2年たつ。今年は途絶えていたブルーベリーを送ろう。成長したお孫さんに食べさせてくださいと、手紙を添えて。

工藤俊逸(71) 青森市

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